2015 Fiscal Year Research-status Report
認知機能障害の発症機序におけるケトン体代謝異常の関与
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15K18911
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Research Institution | Hoshi University |
Principal Investigator |
長谷川 晋也 星薬科大学, 薬学部, 助教 (60386349)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ケトン体 / 初代培養神経細胞 / アセトアセチルCoA合成酵素 / レグマイン |
Outline of Annual Research Achievements |
ケトン体代謝酵素であるアセトアセチルCoA合成酵素(AACS)の機能解析及び神経細胞における役割を検討した。神経細胞におけるAACSの役割を明らかにするために、初代培養神経細胞及びマウス神経芽細胞腫Neuro-2a細胞を用いてRNA干渉法を行った。初代培養神経細胞においてAACSの発現を抑制すると、低分子量Gタンパク質であるcdc42やRhoCのタンパク質発現が抑制することを明らかにした。また、神経芽細胞腫Neuro-2a細胞にレチノイン酸を処理した状態で、AACSの発現を抑制すると、ドパミンからノルエピネフリンの反応を触媒するドパミン-β-ヒドロキシラーゼの遺伝子発現が減少することを明らかにした。続いて、AACSとリソソームに存在するレグマイン との相互作用を検討した。レグマインはアルツハイマー病患者の脳で活性が増加すること、また、レグマインによるタウ切断は神経原繊維の病的変化を引き起こすことが明らかになっている。そこで、レグマインによるAACSの切断部位の同定を試みた。AACSに点変異導入をしてアミノ酸を置換した結果、545番目のアスパラギンをグルタミンに置換すると(N545Q)、AACSの活性が著しく低下した。また、in vitroにおいてAACSとレグマインを相互作用させると、N503Q及びN547Q変異体がレグマインによる切断を抑制すること、また、in vivoにおいてN547Qがレグマインによる切断を抑制することが明らかになった。この時、N547Q変異体はレグマインの活性を抑制した。本年度の結果より、神経細胞の形態や神経伝達物質の合成においてAACSが重要な役割を果たす可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究では、神経細胞の形態や神経伝達物質の合成においてAACSが重要な役割を果たす可能性が示唆された。本結果より神経の機能におけるAACSの重要性や、神経伝達物質とケトン体代謝の関連が示唆されている。また、AACS のレグマインによる切断部位を同定しただけでなく、AACSのドミナントネガティブや、レグマインの活性を阻害するAACSの変異体も作製できた。これらの変異体をウイルスベクターに組込む作業も完了しており、本研究計画的にはおおむね順調であると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
初代培養神経細胞においてAACSの発現を抑制すると、低分子量Gタンパク質であるcdc42やRhoCのタンパク質発現が抑制することを明らかにした。H28年度は、神経細胞の形態形成に対するAACSの役割をより詳細に検討する。また、神経伝達物質の生合成に対するAACSの影響を検討する。計画に従って、認知機能障害モデルマウスにおけるAACS並びに脂質代謝酵素の発現を検討する。認知機能は新奇物質認識試験やモーリス水迷路試験で評価する。また、培養細胞や神経障害モデルにおけるAACSの発現をウイルスベクター法により調節し、治療標的としての有用性を検討する。
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Causes of Carryover |
本年度実施予定であった、認知機能障害モデル動物におけるAACS並びに脂質代謝酵素の発現検討は、初代培養神経細胞においてAACSの発現をウイルスベクター法により改変し、神経障害に対する影響を検討してから実施するほうが良いため、H28年度に移行し次年度使用額として予算を計上する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、認知機能障害モデル動物の購入に30万円を使用する。また、アルツハイマー病モデル動物や細胞を作製するために、Aβの購入に10万円を充てる。培養に使用するでディスポーザブルのディッシュやメスピペット、そして神経細胞やウイルス産生用の細胞に使用する培地の購入に60万円を使用する。また、分子生物学的手法に使用するReal-time PCRの蛍光標識試薬、DNA合成試薬、Western blottingに使用する抗体および試薬、そしてLipofection試薬や各研究に使用する器具および試薬などの購入に50万円を使用する。また、これらの研究により得られた研究成果を発表するために、旅費および学会費として10万円を計上する。
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