2015 Fiscal Year Research-status Report
腎移植患者血清中の抗HLA抗体発現は免疫抑制剤のコントロールにより回避できるか?
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15K18915
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
藤山 信弘 秋田大学, 医学部, 助教 (90603275)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腎移植 / 抗HLA抗体 / 免疫抑制剤 / 薬物治療モニタリング / 個別化医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
1)抗HLA抗体の測定:腎移植後1年におけるレシピエント血清ストック209症例を用いて抗HLA抗体の測定を行った。抗HLA抗体陽性は35例で、そのうち、ドナー特異的HLA抗体(DSA, Donor Specific HLA Antibody)は18例であった。移植前のPreformed DSAを持続的に保有していた患者が9例、移植後初めて産生・検出されるde novo抗体保有患者は9例だった。 2)全ドナー及びレシピエントHLA型のアリルレベル再タイピング:DSA検出技術の向上により、HLA-A,B,C,DR,DQ,DPに対するアリルレベルのDSA特異性まで検出できるようになってきた。また、腎移植の際のHLA型マッチングは血清学レベルかつHLA-A,B,DR座に対して行われ、十分な短期成績を得ている。一方で、長期成績に影響するとされるDSAは、血清レベルのタイピングでは判断できず、アリルレベルのHLAタイピンが必要となる。そこで当院の腎移植ドナー&レシピエント合わせて626症例(2016年3月時点)を対象にアリルレベル再タイピングを実施中である。全ローカスの再タイピングが完了しているのは298症例で、実施中が162症例、未着手が166症例である。 3)抗HLA抗体産生と免疫抑制剤TDMの関連性:腎移植後1年におけるレシピエント血清中の抗HLA抗体(de novo DSA)産生とタクロリムスTDMとの関連性を評価した。結果として、DSA陽性群において陰性群と比較して移植後3-6ヶ月のトラフ値CV%は有意に高く(p=0.035)、同様に3-12ヶ月のトラフ値の最低値がより低い群でDSA陽性症例が多い傾向が見られた。ROC解析より3-6ヶ月のCV値のカットオフ値を算出したところ21.1%であった。移植後3-6ヶ月の目標Tacトラフ値は5-8 ng/mLであることから、de novo DSA発現予防のためにTacトラフ値の変動幅を±1~1.5 ng/mL以内を目標とすることが必要と考えられた。また、移植後3-6ヶ月のトラフ値の最低ラインは3.5ng/mL以上が目安と考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ドナー腎臓のHLAを標的としたレシピエント(宿主)の獲得免疫は、移植腎予後に大きく関わる。DSAは獲得免疫による産物であり、レシピエント移植後血清中のドナーHLA特異的抗体の有無は、移植腎病理診断Banff分類における抗体関連拒絶反応の診断に必須とされる。DSAはドナー腎臓にダイレクトに反応することから、DSAの有無や抗体価を明らかにしておくことは極めて重要である。本検討では抗HLA抗体産生及びその抗体価が与える拒絶反応とグラフト生着への影響を明らかにすると共に、免疫抑制剤の用量またはTDMと関連性を明らかにすることを目的に検討を行っている。 現段階で得られた結果として、移植後1年目のレシピエント血清中抗HLA抗体の産生状況が明らかとなり、DSA陽性群では陰性群に比べグラフト生着率は低く、その抗体価が大きいほど予後不良であった。また、DSA産生患者ほどタクロリムス血中トラフ濃度のCV%が大きい(すなわち、血中トラフ濃度がばらつきやすい)ことが明らかとなった(論文準備中)。単変量解析によるDSAとタクロリムストラフ値との関連性が明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
①腎移植の場合、術後どんなに時節が経過してもDSA抗体獲得リスクが完全に消失することはない。それゆえ、移植後1年だけでなく、3,5,10,20年と経過する過程において定期的な抗HLA抗体(de novo DSA)産生状況を明らかにする必要がある。すでに腎移植後3-5年及び7-10年後の血清のストックを継続的に進めており、その血清を用いて抗HLA抗体産生を明らかにし、さらに拒絶応答及びグラフト生着への影響について明らかにする。 ②生体腎移植ドナー及びレシピエントのHLA遺伝子タイピングをアリルレベル(アミノ酸レベルで区別されるHLA型)で実施するのは、HLA抗体検査の結果得られる抗原特異性が真にDSAかどうかを判定するために不可欠である。過去に遡って残りすべての患者のリタイピングを行う。 ③現在の腎移植医療において使用される免疫抑制剤には、タクロリムス以外にもミコフェノール酸とエベロリムスなどがある。これらの免疫抑制剤の使用量及びTDMデータと抗HLA抗体(de novo DSA)産生との関連性を明らかにする。また、免疫抑制剤以外のあらゆるファクターを用いた多変量解析を実施し、関連因子と各因子の寄与を明らかにする。 ④抗HLA抗体測定によるDSA評価は、抗体関連拒絶の診断基準のひとつであり、現在最も使用される判定基準Banff分類に明記されている。しかしながら、腎移植のみならず、すべての移植医療において移植後の抗HLA抗体測定は保険上認められていない。早期から定期的な抗HLA抗体測定が可能となるようなエビデンス作りと、多施設共同研究を進めるための足がかりとなるような検討・解析につなげていく。
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Causes of Carryover |
研究自体は、概ね計画通りに進んでいる。その際、その際に使用した研究費の端数として残金が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
エッペンドルフチューブやPCRチューブなど、安価な消耗品の一部として使用する予定である。
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[Presentation] Anti-HLA antibody productions at one year after kidney transplantation and its influence2016
Author(s)
Nobuhiro Fujiyama, Shin Okuyama, Mitsuru Saito, Takamitsu Inoue, Ryuhei Yamamoto, Yasushi Kusunoki, Hiroto Kojima, Hidenori Tanaka, Hiroo Saji, Tomonori Habuchi, Shigeru Sato
Organizer
Transplantation Science Symposium Asian Regional Meeting 2016
Place of Presentation
Tokyo
Year and Date
2016-04-08 – 2016-04-09
Int'l Joint Research
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