2015 Fiscal Year Research-status Report
薬物動態変動要因としての栄養組成および腸内細菌叢環境の関与
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15K18918
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
嶋田 努 金沢大学, 大学病院, 准教授 (90409384)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 腸内細菌叢 / 薬物動態 / 食物繊維 / 整腸剤 / 高脂肪食 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的である、腸内細菌叢環境が薬物の体内動態に及ぼす影響を検討するためH27年度は各種モデル動物の作成および評価を実施した。先行研究の経腸栄養剤で体内動態が変動する要因をして、いくつか候補があったが、まず初めに食物繊維に注目し水溶性食物繊維(サンファイバーパウダー)と非水溶性食物繊維(セルロースパウダー)を通常粉末食AIN-93Gに5%混和した餌を自由摂取させたモデルを作成し、代表的な薬物動態変動因子であるCYP各種およびトランスポータ各種の変動を遺伝子ならびに蛋白発現レベルで検討した。その結果、上記食物繊維混餌飼料を4週間自由摂取させたところ、非水溶性食物繊維群と比較し水溶性食物繊維群の肝臓において薬物の50%以上の代謝に関与するCYP3A遺伝子発現の有意な発現低下が確認された。そこで、同タンパク質発現変動を確認したところ、変動は確認できなかった。そこで、引き続き同食物繊維混餌飼料の投与期間を8週間に延長し、同様に肝臓における各種薬物体内動態変動因子の発現変動を確認したが、有意な変化が確認できなかった。現在本モデルにおける糞中の腸内細菌叢パターンの変動を一斉網羅的解析法T-RFLP法を用い確認しているところであるが、本モデルでは今回検討した薬物動態変動因子を基質とする薬物の体内動態の変動は認められず、通常食を摂取している範囲では、水溶性食物繊維が薬物動態の変動には影響しないであろうことを示唆するものである。なお現在他の腸内細菌叢変動モデルとして整腸剤の処置モデル(ラックビーおよびミヤBM)、ならびに脂肪食負荷モデルを作成し、薬物動態変動因子が変化するモデルを作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
H27には食物繊維摂取に伴う腸内細菌叢変動モデルを摂取期間を変え作成したが、本モデルでは、薬物動態変動因子が大きく変動するモデルが認められなかった。研究計画書では、H27年度にモデル作成を実施し、H28年度には、基質薬物の体内動態を検討する予定であったが、有用なモデルが現在までに作成できていない状態である。現在も平行して3種類のモデル(整腸剤モデル2種類、高脂肪職負荷モデル)を作成しており、2016年8月までには作成ならびに評価できるものと思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在作成中の3種類のモデル動物(整腸剤モデル2種類、高脂肪職負荷モデル)において、薬物動態変動因子の発現変動を検討する。また、昨年度の結果を受け、水溶性食物繊維だけでは変動が確認されなかったことから高脂肪食に水溶性食物繊維を混餌させた飼料摂取による、より腸内細菌叢が大幅に変動したモデルも作成し、食環境の変化に伴う生活習慣病者に対する機能性表示食品や特別保健用食品による食品ー薬物相互作用の可能性についても検討する予定である。 これらモデル動物において、薬物動態変動因子が大きく変動したモデル動物においては当初の計画通り基質薬物の体内動態について引き続き検討を実施する。
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Causes of Carryover |
若干(30,880円)の次年度使用額が発生したが、ほぼ目的どおり使用できたと思われる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究において、物品費として使用する予定である。
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