2015 Fiscal Year Research-status Report
リウマチ性疾患へのアザチオプリンの治療効果に対する遺伝子型の影響とその機序の解明
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15K18933
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
青森 達 慶應義塾大学, 薬学部, 講師 (40620802)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | アザチオプリン / 関節リウマチ / inosine triphosphatase / ITPA |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、アザチオプリンを関節リウマチに対して投与する例が増えている。欧米人と日本人とではアザチオプリン代謝酵素の多型頻度が異なり、日本人患者についての治療の有用性は不明である。本研究ではこの点を明らかにするとともに、アザチオプリンの代謝に関連する酵素の遺伝子多型が関節リウマチの治療効果にも影響するか否かを明らかにする目的で研究を行った。 平成27年度は研究計画に従い、アザチオプリンを服用中の関節リウマチ患者から書面による同意を取得し、試験へのエントリーを開始した。患者の遺伝子多型解析および、診療記録からのデータ抽出を行い、薬物代謝に関連する酵素の遺伝子型と治療効果との関連を解析した。なおこれらの研究は、研究倫理委員会の承認のもとに実施した。 アザチオプリンの代謝に関連する酵素のひとつである ITPA について、16%のアレル頻度で 96C>A 変異を検出した。この変異を有する患者とそうでない患者とで、アザチオプリンによる治療効果に差は見られなかったが、変異のある患者では投与量がより少ないことを見出した。このことから、 ITPA 96C>A 変異を有する患者は、アザチオプリンに対する感受性が高いと言える。このことは、全身性エリテマトーデスなど、関節リウマチ以外の疾患を対象とした過去の研究と一致した結果であった。 本研究成果は、関節リウマチ患者に対してアザチオプリンを投与する際の感受性の予測および不必要な投与の回避につながるものである。 これらの成果の一部を国際学会にて発表した。また論文を作成し、海外の学術雑誌に投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は研究計画に従って臨床研究の承認を得て対象患者のエントリーを開始し、患者の遺伝子多型解析を行った。また平成28年度以降に行うこととしていた診療情報の抽出を前倒しで行い、遺伝子変異の有無と治療効果の関係を明らかにすることができた。 一方で平成27年度に行う計画であった血清中生物学的製剤濃度および抗生物学的製剤抗体価測定は十分な検体数が集まっていないため次年度以降にも継続して行う必要がある。既に入手した検体については測定を行い、データを蓄積しつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は新規対象患者のエントリーを継続して行う。血清中生物学的製剤濃度および抗生物学的製剤抗体価測定をおこない、アザチオプリンと生物学的製剤を併用した場合の効果について考察する。また、日本人関節リウマチ患者に対するアザチオプリンの治療効果を考察する。
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Causes of Carryover |
実験用消耗品の購入、学会発表のための旅費等で当初の予算は概ね使用した。薬物血中濃度測定のための検体数が予想よりも少なく、試薬の使用量が若干少なかったため、自年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
薬物血中濃度測定のための消耗品および試薬の購入、学会発表のための旅費、論文発表のための諸経費として使用する。
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