2015 Fiscal Year Research-status Report
精神病発症危険状態(ARMS)患者における血清中不飽和脂肪酸濃度の変動解析
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15K18936
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
小野里 磨優 東邦大学, 薬学部, 博士研究員 (50610094)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ARMS / 不飽和脂肪酸 / 血清バイオマーカー |
Outline of Annual Research Achievements |
東邦大学医療センター大森病院(研究協力者・辻野)の協力のもと、本研究の目的・内容を文書にて十分な説明をした上で、必要な研究参加の同意を文書にて得られたARMS患者群の採血を実施し、血清を得た(18人)。健常人群も同様に学生ボランティアによる研究参加への同意を得て、血清サンプルを得た(17人)。現在も、ARMS患者についてはヒト血清サンプルの採取・保存を継続している。平成27年度は、主としてヒト血清中不飽和脂肪酸(PUFA)及び脂肪酸の代謝体3-ヒドロキシ酪酸(3-HB)のための測定系の構築及び定量を行った。 1 不飽和脂肪酸(PUFA) ヒト血清中PUFAの高感度測定を行うため、LC-MS/MSによる測定系を構築することにした。ヒト血清10 uLを除タンパク・クロロホルム抽出・誘導体化・固相抽出することにし、クロロホルム抽出条件、誘導体化剤、及び固相抽出カートリッジの検討を行った。クロロホルム抽出には、12.5 mg/L没食子酸プロピルin クロロホルム、誘導体化剤DAABD-AE、InertSep SCXカートリッジを使用することに決定した。現在は、LC-MS/MSの最適測定条件を見出すため、移動相の組成及びグラジエント条件を検討している。 2 3-ヒドロキシ酪酸(3-HB) ヒト血清10 uLを除タンパク・蛍光試薬NBD-PZを用いて蛍光誘導体化した後、固相抽出(MonoSpinTM SCX, GL Sciences)を行い、測定試料を調製した。続いて、HPLC-MS[カラム:TSKgel ODS-80TsQA(150×2.1 mm, 5 um)]を用い、移動相には0.05% HCOOH in MeOH/H2O (40/60)を使用して、3-HB濃度を測定した。その結果、ARMS群の方が健常人群よりも低濃度である傾向が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度に予定していた臨床研究を平成27年度に実施することにしたが、ARMS患者・健常人共に検体数はおおむね順調に集まっていると思われる。また、健常人については平成28年度内に再度ボランティア学生を募集し、採血を実施する予定である(血清中PUFAと3-HB濃度の季節変動の有無を確認するため)。 3-HB測定については測定系を構築し、それを使用してヒト血清中3-HB定量を順調に行えた。一方、PUFAの測定系については測定条件の最適化が必要な状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度内に測定条件の最適化が完了しなかったPUFAについても、平成28年度初頭には完了見込みである。その構築した系を用いてヒト血清(ARMS患者及び健常人)中PUFA測定を優先的に実施する。 平成28年度は、主として「統合失調症モデルラットを用いた基礎研究」を行う。 1 病態モデルラット作製期間中の血清・脳組織中PUFA・3-HB濃度推移:NMDA受容体遮断薬ケタミン(麻薬指定物質)連続投与によるモデルラットの血漿中リノール酸やアラキドン酸濃度はケタミン連続投与何日目から低下するのか、3-HBもPUFAの変化に伴って同様な推移を示すのかといった動態や、脳内におけるPUFAの分布などを明らかにする。 2 飼料中の脂肪含有量の違いに伴うラット血清・脳組織中PUFA・3-HBの濃度変動:作製した病態モデルラットに脂肪含有量の異なる飼料(通常餌、脂肪餌、脂肪欠乏餌)を摂餌させ、断続的に血清中PUFA・3-HBの濃度推移を解析することで、脂肪餌による血清中PUFA濃度上昇のみでなく、3-HB増加がもたらされているか否かを明らかにする。また、最も効果的な脂肪食の組成や摂餌期間等を検討する。 3 投薬+脂肪餌による血清・脳組織中及び脳組織中の不飽和脂肪酸PUFA・3-HB濃度推移の比較:最も効果のある摂餌条件による脂肪餌の摂餌と併せて統合失調症治療薬を投与する。この時、投与薬物と投与期間の違いによる血清中PUFA及び3-HBの濃度変動についても調べる。
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Causes of Carryover |
購入した試薬が実際には予定よりも安価に購入できたため、使用予定の金額との差額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
ヒト血清(ARMS患者及び健常人)中PUFA及び3-HB測定に必要な溶媒、固相抽出カートリッジ等の消耗品の購入に使用する。また、病態モデルラットを用いた基礎研究のためのラット、飼料等の購入を予定している。
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Research Products
(4 results)