2016 Fiscal Year Research-status Report
新規アデノウイルスベクターを用いた糖尿病の遺伝子治療と遺伝子機能解析
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15K18939
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Research Institution | Osaka Ohtani University |
Principal Investigator |
清水 かほり 大阪大谷大学, 薬学部, 助教 (50737749)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 糖尿病 / アデノウイルスベクター / GWAS / 生活習慣病 / 遺伝子治療 / 肝臓 |
Outline of Annual Research Achievements |
2015年に世界の糖尿病人口は4億人を突破し、糖尿病患者は年々増え続けている。糖尿病の9割以上を占める2型糖尿病に対する治療薬は盛んに研究されているものの、2型糖尿病の病態は多様なため、新たな2型糖尿病治療薬の開発は急務である。2型糖尿病患者の特徴は日本人と欧米人では異なることから、2型糖尿病の発症メカニズムは人種によって異なる可能性が考えられている。そこで日本人により適した2型糖尿病の治療法の開発を目指し、ゲノムワイド関連解析(GWAS: Genome-Wide Association Study)により同定された日本人を含む東アジア人における2型糖尿病の発症に関わる遺伝子領域に注目した。同定された遺伝子領域のうち、2型糖尿病との関与が不明な赤芽球島関連タンパク質のひとつであるmacrophage erythroblast attacher (MAEA)に着目した。そしてMAEAを肝障害性が低く、長期に発現が可能な改良型アデノウイルスベクターに搭載し(Ad-MAEA)、2型糖尿病への関与を検討した。 MAEAが糖代謝に及ぼす直接的な影響を調べるため、Ad-MAEAをマウス初代培養肝細胞に作用させ、糖代謝に関与する種々の遺伝子発現を定量的RT-PCRにより検討した。その結果、Ad-MAEA群はコントロール群と比較して、糖新生系遺伝子であるG6Pase、PEPCK、FBPaseの発現が有意に抑制された。また、糖新生系遺伝子の発現を制御するHNF-4aの発現も、Ad-MAEA群では抑制されていた。本研究結果より、新規2型糖尿病感受性遺伝子のひとつであるMAEAを過剰発現させることで、HNF-4aの発現抑制を介して肝臓における糖新生が抑制されることが示唆され、MAEAが2型糖尿病治療につながる可能性を見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規2型糖尿病感受性遺伝子のひとつであるMAEAが糖新生系に関与することを見出し、学会発表及び論文発表を行った。 また新たに他の遺伝子にも着目し、当該遺伝子を搭載したアデノウイルスベクターを作製した。そして、当該遺伝子をマウスに過剰発現させることで体重の上昇度がコントロール群よりも緩やかであることが示され、当該遺伝子が糖尿病をはじめとする生活習慣病に関与する可能性を見出した。
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Strategy for Future Research Activity |
新たに着目している遺伝子を搭載したアデノウイルスベクターをマウスに投与し、表現型の変化を詳細に調べる。具体的には、糖負荷試験、組織切片を用いた観察、生化学検査(ALT、血糖値、血中中性脂肪値等)を調べる。さらに、これらの結果をもとに、糖・脂質代謝に対するメカニズムを解析する。そして、糖尿病の治療・予防に対する効果を検討する。 また、これまでに作製した他の新規2型糖尿病感受性遺伝子、糖尿病に関与すると考えられる遺伝子を搭載したアデノウイルスベクターを用いて、本年度と同様にこれら遺伝子と糖尿病との関連を評価する。
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Research Products
(8 results)