2016 Fiscal Year Research-status Report
リバーストランスレーショナルリサーチによる糖尿病患者の癌化学療法エビデンスの構築
Project/Area Number |
15K18940
|
Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
池村 舞 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (60709278)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 糖尿病 / 高血糖 / 大腸癌 / 癌化学療法 / オキサリプラチン / フルオロウラシル |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病患者では、癌の罹患率が高く、死亡率も高いことが知られている。その原因として癌化学療法による有効性や安全性が低い可能性が考えられるが、その詳細は十分明らかにされていないのが現状である。そこで、本研究では、臨床での実態調査と、細胞や動物を用いた基礎的な検討から、糖尿病における癌化学療法の有効性や安全性について評価することとした。 患者診療情報を用いた調査では、昨年度から引き続きFOLFOX(オキサリプラチン・フルオロウラシル)を含む化学療法を施行された大腸癌患者を対象として、電子カルテを用いて後方視的に調査を行った。糖尿病を基礎に持つ患者と持たない患者を比較したところ、副作用発現率に大きな違いはなかったが、治療開始後の生存期間は有意な差はなかったものの、糖尿病患者でやや短い傾向にあった。FOLFIRI(イリノテカン・フルオロウラシル)を含む化学療法を施行された大腸癌患者についても調査を進めており、同様の結果を得ている。 動物を用いた検討では、ストレプトゾトシンの投与により作成した高血糖モデルマウスと対照マウスに大腸癌細胞株Colon26を移植した。高血糖モデルマウスでは、対照マウスと比較して、腫瘍の増殖が遅かった。それらマウスにオキサリプラチンとフルオロウラシルを投与したところ、対照マウスでは腫瘍の増殖が有意に抑制されたが、高血糖モデルマウスではほとんど抑制されなかった。さらに、高血糖モデルマウスでは、抗癌剤の投与の有無によらず、早期に死亡した。以上より、血糖値がコントロールされていない糖尿病では、オキサリプラチンとフルオロウラシルによる有効性が低い可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、患者診療情報の調査と細胞・動物を用いた検討を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
患者診療情報を用いた調査では、糖尿病患者数が少ない。別のレジメンを含め、調査対象を拡大する。 動物を用いた検討では、抗癌剤を投与された高血糖モデルマウスにおける腫瘍増殖や生存期間に及ぼす影響について、メカニズム解明を行う。
|
Causes of Carryover |
当初予定していた実験のための試薬、消耗品、動物の購入や、成果発表の旅費等にあてたが、残額が発生した。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
主として実験消耗品に使用し、成果発表のためにも使用する。
|