2019 Fiscal Year Research-status Report
続発性てんかん回避に向けた早期薬物治療介入への基礎的検討
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15K18947
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Research Institution | Tokushima Bunri University |
Principal Investigator |
小森 理絵 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (70412400)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 症候性てんかん / てんかん原性 / 脳内炎症 / レベチラセタム / CAGE |
Outline of Annual Research Achievements |
症候性てんかん発症モデルとしてピロカルピン誘導重積けいれん(SE)モデルマウスを作製し、てんかん発症へ向けた準備段階である「てんかん原性」の初期に相当するSE6時間、及び2日後の脳内変化について解析した。Cap Analysis of Gene Expression(CAGE)法を用いた網羅的遺伝子発現解析を行い、1.各時点における遺伝子発現の変動解析、2.早期脳内変化に関与する転写因子候補の選出、を行った。また、てんかん原性の進行に影響するとされ、症候性てんかん発症抑制への効果が期待される抗てんかん薬レベチラセタム(LEV)を投与した場合の各因子の発現変化を調べ、3.SE直後からのLEV投与がてんかん原性初期の脳内変化に与える影響の解析を行い、LEVの症候性てんかん発症抑制薬としての可能性について考察した。 1.非SE誘発群と比較して4倍以上に発現が増加した遺伝子について遺伝子オントロジー解析を行った結果、SE後には免疫・炎症関連遺伝子の発現亢進が認められた。より初期段階に当たるSE6時間後には、顆粒球遊走や血管新生関連遺伝子も検出され、当研究室で既に見出しているてんかん原性初期に起こる脳内現象の進行(炎症、血管新生、血液脳関門(BBB)透過性亢進等)が矛盾なく説明できることが示された。 2.転写因子結合モチーフ探索の結果、これら遺伝子の発現変化には、AP-1を構成する最初期遺伝子(IEGs)であるfos、junグループ等が関与していることが示唆された。 3.LEV投与群では、これら遺伝子のてんかん原性初期からの発現亢進が抑制されていた。つまり、LEVの作用機序として、転写調節、特にIEGs発現の抑制により早期に起こる炎症やBBB関連遺伝子の発現を調節していることが示唆され、このようなてんかん原性初期の脳内状態の正常化がその後の症候性てんかん発症回避に役立つと推察された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、てんかん原性初期において特に大々的な発現変動がみられたインターロイキン、ケモカインに注目し、培養ミクログリアを用いて薬剤投与効果を検証する等、抗炎症に限定した解析を行う予定であった。しかし、他にも多くの因子が変動していることが明らかとなり、限定的な解析の前にまずは全体像を把握することが重要であると判断した。今回、CAGE解析の実施により遺伝子発現プロファイルを得たことで、てんかん原性初期の脳内変化についてより包括的に捉えることが可能となり、研究目的達成のために必須となるLEV投与群との相違点についても明確化できた。LEVの作用機序としてはシナプス小胞タンパク質2A(SV2A)阻害が広く知られているが、今回新たにIEGsの発現レベルへ作用することで、脳内炎症やBBB関連遺伝子の発現調節に関わっていることが明らかとなり、様々な面からの解析準備を整えられたと考えたため、この評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
1.CAGE解析により見出したてんかん原性初期の脳内変化に関わる遺伝子の発現変動への最初期遺伝子の関与と、LEVの投与効果をより明確にするため、更に上流にさかのぼった解析を実施する。 2.てんかん原性初期の脳内変化発生機構をより詳細に把握するため、磁気ビーズやフローサイトメトリーを用いた細胞分離により、脳を構成する神経細胞(ニューロン)、グリア細胞(アストロサイト等)を抽出し、各分画におけるてんかん原性初期変動遺伝子の発現レベルの違いを解析する。また、当研究室において別途明らかにしているてんかん原性初期に脳内への浸潤がみられる細胞集団についても、同様に分取して検証する。 3.てんかん原性への影響が否定されている抗てんかん薬を投与した場合との比較を行い、より重要と考えられる候補因子を絞り込む。
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Causes of Carryover |
(理由)データ解析を中心に行い、物品購入費が予定より少なかったため。 (使用計画)サンプル数を増やした解析を行うためのマウス購入・飼育費、脳細胞の分取と遺伝子発現解析をはじめとした分子生物学的解析に必要な抗体・酵素等、消耗品購入に充てる予定である。
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Research Products
(7 results)