2015 Fiscal Year Research-status Report
慢性閉塞性肺疾患における禁煙補助薬バレニクリンによる心血管イベント発症機序
Project/Area Number |
15K18948
|
Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
古賀 允久 福岡大学, 薬学部, 助教 (60570801)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 副作用 / 心血管 / バレニクリン |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)患者は、高齢化に伴い増加している。COPDの治療、COPDによる心・血管疾患などの全身性合併症の発症予防には禁煙が最も効果的である。経口禁煙補助薬バレニクリンは、禁煙治療において画期的で有効性の高い医薬品であるが、心血管イベントの発症リスクを上昇させる重篤な副作用が報告された。しかし、この発症機序に関する基礎研究は殆どない。そこで、COPD病態下におけるバレニクリンの心血管イベントの発症機序を解明することを企てた。 具体的には動脈硬化モデルマウス(ApoE KOマウス)にporcine pancreatic elastase(PPE)を気管内に噴霧し、COPDモデルを作製する。このApoE KO / COPDモデルマウスにバレニクリンを投与し、動脈硬化巣の形成・進展を指標として心血管イベントの発症リスクについて評価する(in vivo実験)。 その結果、ApoE KOモデルマウス(0U PPE)と比較して、ApoE KO / COPDモデルマウスにおける全大動脈の動脈硬化巣の形成は、促進していた。さらに、バレニクリン投与によりApoE KO / COPDモデルマウスにおける全大動脈の動脈硬化巣の形成は増悪していた。 よって、COPD病態下においてもバレニクリンは動脈硬化巣の形成を促進させることが示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、3UのPPEをApoE KOマウスに噴霧予定であったが、3UのPPE噴霧によりマウスの死亡率が約70%と高くPPEの噴霧量を検討した。2U PPE噴霧では死亡率は約25%に減少したため、PPEの噴霧量を3Uから2Uへ変更した。また2U PPE噴霧によりCOPDの特長である肺胞径の拡大および動脈血酸素飽和度の減少が認められた。以上のことから、2U PPE噴霧をApoE KO / COPDモデルマウスと決定し、実験を進めた。 このApoE / COPDモデルマウスにバレニクリン(0.5mg / kg / day)を3週間投与したところ、バレニクリンにより動脈硬化巣の形成促進が認められた。 このように当初の予定とPPEの噴霧量は変更になったが、本研究の目的であるCOPD病態下におけるバレニクリンの心血管イベントの発症機序を解明するための動物実験状況を考慮すれば、研究の進捗状況としてはおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
ApoE KO / COPDモデルマウスにおいて、バレニクリンによる動脈硬化巣の安定化に対する影響を検討するため、大動脈起始部における動脈硬化巣の凍結切片スライドを作成し、AZAN染色(コラーゲン)、MOMA-2(単球・マクロファージ)、α-SMA (smooth muscle actin)の免疫組織染色を行う。それぞれの陽性領域面積を測定し、プラーク不安定化スコアにより、動脈硬化巣の不安定性を評価する。また全大動脈における炎症性メディエーター(IL6、TNF-α;など)の発現変化をウエスタンブロット、リアルタイムPCR法で評価する。 またCOPD病態下では低酸素状態になることから、動脈硬化症の発症・進展に関連する血管内皮細胞、炎症性細胞、血管平滑筋細胞などを低酸素条件下でバレニクリンを処理することにより、COPD病態下におけるバレニクリンの影響を検証する。また、計画通りに進まない場合は、COPD病態下では血中IL6、TNF-αが上昇することから、動脈硬化症の発症・進展に関与する血管内皮細胞、炎症性細胞、血管平滑筋などを用いてIL6、TNF-α存在下におけるバレニクリンの作用を炎症性サイトカインや生理活性物質の産生、細胞動態(増殖、浸潤・遊走、oxLDL取り込み)を指標として評価する(in vitro実験)。 またバレニクリンは、α4β2 nAChR部分作動薬、α7 nAChR完全作動薬であり、α7 nAChRは炎症性細胞、血管内皮細胞、血管平滑筋細胞、血小板などの動脈硬化巣の形成・進展に関与する細胞に発現している。そこで、α7 nAChRに着目し、COPD病態下におけるα7 nAChRを介するバレニクリンの作用を明らかにする。
|
Causes of Carryover |
実験物品費の端数の金額が生じたため、交付金額と実支出額との間に130円の差額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度の物品費に、今回の繰越金額を使用する予定である。
|
Research Products
(4 results)