2015 Fiscal Year Research-status Report
腸管における糖タンパク質の多様性と機能に関する組織化学的研究
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15K18959
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Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
菅原 大介 杏林大学, 医学部, 助教 (00390766)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | レクチン / フコシル化糖鎖 / 糖タンパク質 / 糖鎖 / 腸管上皮 |
Outline of Annual Research Achievements |
哺乳類タンパク質の代表的な翻訳後修飾である糖鎖付加の生物学的機能理解には、糖鎖が付加されたコアタンパク質と、その組織・細胞局在の特定が必要である。本研究の目的は、糖鎖及びコアタンパク質が異なる糖タンパク質を各々区別し、臓器を構成するどの細胞に発現するか明らかにすることである。フコシル化糖鎖の腸管における機能的重要性を踏まえ、フコシル化糖タンパク質の発現分布をマウス腸管にて検討する。 生体には様々な種類のフコシル化糖鎖が発現する。そこで、まず、1. 腸管における各種フコシル化糖鎖発現状況を免疫組織化学的検討により明らかにすることで、本計画で優先的に検討すべきフコシル化糖鎖種を選定し、次に、2. 着目したフコシル化糖鎖が付加されたタンパク質を検討した。具体的には、1. フコシル化糖鎖の発現・分布を明らかにするため、免疫組織化学染色をマウス小腸組織切片において実施した。結合するフコシル化糖鎖が異なる複数のレクチンおよび抗糖鎖抗体を用いたことで、小腸上皮において各種フコシル化糖鎖は、細胞種、またその分化段階に応じて、特徴的な発現パターンを示すことが分かった。末端のガラクトースにフコース残基がα1,2結合したH型糖鎖は、腸管陰窩において特異な発現パターンを示すことを明らかにした。特にBurkholderia cenocepacia由来レクチンrBC2LCNは、他のレクチンとは異なる染色パターンを示した。同レクチンがフコシル化糖鎖検出のための新たなプローブとして免疫組織化学的検討に有用であることも分かった。2. 引き続き、マウス小腸組織全体からタンパク質を調製し、H型糖鎖が付加されているタンパク質の同定を試みた。レクチンを利用したプロテオミクス解析を行った結果、1000種以上のタンパク質がその候補として同定された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画の通り、マウス腸管におけるフコシル化糖鎖の発現・分布を免疫組織化学的に検討し、フコシル化糖鎖が付加されたタンパク質の同定のため、グライコプロテオミクス解析を実施した。タンパク質糖鎖修飾の生物学的機能の理解を目的とした本研究において、優先的に検討を加えるべき糖鎖種を選択することもできた。研究成果の一部は、関連研究領域の学会にて報告した。以上の状況から概ね計画通りに検討が進んでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
取得した目的タンパク質候補リストには、予想通り多数の候補が含まれた。計画期間内に全てを検討することは困難である。糖タンパク質の組織分布検討を効率的に行うため、タンパク質データベースやHuman Protein Atlas等による既知情報を利用することで、タンパク質の細胞内局在や予想される生物学的機能に基いて候補の絞込みを行う。並行して、着目すべき腸管上皮細胞を選別した上で、コアタンパク質同定解析を行う。解析対象を絞ることで、目的とする細胞種に発現するコアタンパク質をより効率的に同定することを試みる。解析対象とすべき糖タンパク質を決定し、in situ PLA (Proximity Ligation Assay)法を応用することでマウス腸管組織切片上、糖タンパク質として組織細胞分布を明らかにする。
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Causes of Carryover |
研究実施に必須である抗体試薬は高価であり、複数種の使用が想定されたことから相当の支出を見込んだ。同一抗体でも小容量の、比較的安価な抗体を購入、使用することができたため、計画よりも物品費の支出が抑えられた。3月末に実施した学会出張に掛かる旅費は、会計処理の都合、本年度分に含まれず、次年度分にて支出される。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
生じた繰越分は、試薬等の物品費、および成果発表のための旅費を中心に支出する。特にin situ PLA解析用試薬や目的タンパク質に対する抗体の購入を見込んでいる。
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