2015 Fiscal Year Research-status Report
心臓において力学シグナルを核へと伝える転写コファクターの解析
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15K18964
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
久保 純 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (50638830)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 力学刺激 / 転写コファクター / 細胞質-核シャトリング / アクチン / TAC |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、心臓において力学的な刺激を核に伝える因子として私が注目している転写コファクターの解析を行った。まず細胞質-核シャトリングにかかわるタンパク質ドメインを同定するため、様々なドメインを欠損する発現ベクターを構築した。このベクターを用いて解析を行い、細胞質から核への移行に必要と思われるタンパク質ドメインを同定した。先行研究により、このドメインはG-アクチンが結合することが言われていたため、アクチン変異体(R62D、S14C)の共発現を行ったところ、アクチン動態依存的な細胞内局在を示した。力学刺激とアクチンとのかかわりを明らかにするため、トロポニンT2のKOマウスやゼブラフィッシュ胚を用いて、心筋におけるアクチンの状態を可視化し、一定の関連があることを確認した。 この転写コファクターが相互作用すると思われる転写因子について、共免疫沈降法を用いて相互作用の確認を行った。またルシフェラーゼアッセイを行い、転写を協調的に活性化することについても確認を行った。 生体心臓での機能を明らかにするために、この転写コファクターのFloxマウスを導入し、aMHC-CreERラインと掛け合わせ、コンディショナルKOマウスを作成した。成体マウスにタモキシフェンを投与し、その影響を観察した。現在のところ、一部の個体において心臓の肥大が認められている。今後はこのマウスに対し、TACによって負荷をかけ、表現型を観察する予定である。 また心筋におけるこの転写コファクターと相互作用する転写因子を同定したことから、転写因子の標的遺伝子として知られている遺伝子の発現量を、ノックアウトマウスの心臓(胎児・成体)からRNAを抽出し、qPCRによって定量した。(ただ、現在までに顕著な変化を示すものは見つかっておらず、そのためマイクロアレイを用いた解析については、いったん保留している)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた計画通りの進捗状況であるといえる。 まず、私が注目している転写コファクターの核移行メカニズムについては、デリーション・コンストラクトを用いて、計画通りに行うことができた。またアクチン動態との関係についても、アクチン変異体(R62D、S14C)を用いた解析により明らかにすることができている。転写因子との関係については、共免疫沈降やルシフェラーゼアッセイによって解析済みである。(当初予定していたHippoパスウェイとの関係についても、ルシフェラーゼアッセイを実施済みである) 生体心臓での解析については、コンディショナルKOマウスを樹立できており、タモキシフェン投与により一部のマウスで心肥大が起こることが確認できた。ただその頻度は大きくなく、H28年度に予定しているTAC手術によって負荷をかけるモデルで詳細を見ていきたいと思っている。 一方、標的遺伝子の同定については、難航している。マイクロアレイ解析を行う前の予備実験として、この転写コファクターが相互作用する転写因子の既知の標的遺伝子について、その発現量の変化を調べたが、顕著な差を示すものはなかった。生体心臓で心肥大を示すものの割合が低いことから、遺伝子レベルでの発現量には個体ごとにばらつきがある可能性がある。今後、TACマウスなど負荷をかけた条件下で顕著な表現型がみられるようであれば、その系でマイクロアレイ解析を行ったほうが良いと考えている。また、エピトープタグのノックインマウスについては、現在までに樹立ができていない。H28年度の早期にマウスの樹立を行いたいと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究計画に従って進めていく予定である。 H27年度に実施ができなかったマイクロアレイ解析については、H28年度に実施するTACマウスの表現型を見極めながら実施したいと思っている。またノックインマウスについても、樹立ができていないため、H28年度のできるだけ早期に樹立したいと考えている。(ただこちらのマウスについては、この転写コファクターのタンパク質の大部分のドメインを残したままLacZとの融合タンパク質になる遺伝子トラップマウスを導入しており、研究内容によってはこの遺伝子トラップマウスを用いたいと考えている。)
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Research Products
(4 results)