2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K18966
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
藤山 知之 筑波大学, 国際統合睡眠医科学研究機構, 研究員 (00635089)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | レム睡眠 / Dreamless / 一塩基置換 / in situ hybridization |
Outline of Annual Research Achievements |
レム睡眠異常をもたらす新規睡眠関連遺伝子DRL発現細胞の神経領域内分布・性質・機能の解明
Dreamless変異マウスにおける候補遺伝子DRLおよび塩基配列変異部位が、遺伝子連鎖解析と次世代シーケンシングにより同定されていた。そこで、CRISPR/Casシステムを用いて候補遺伝子DRLのみに特異的に変異導入することでDreamless変異マウスの再現を試みた。その結果、DRL遺伝子特異的改変アリルを持つマウス個体の作成に成功し、このヘテロ変異個体を用いて脳波筋電図測定(EEG/EMG recording)により睡眠覚醒様式について解析した結果、レム睡眠時間減少の表現型を示した。すなわち、DRL遺伝子がレム睡眠異常の原因遺伝子であることを直接証明し、本研究におけるレム睡眠異常と原因遺伝子変異部位との因果関係を確定することができた。 次に、新規睡眠関連遺伝子であることが確定したDRL遺伝子について、この遺伝子がレム睡眠行動制御に関わる神経回路の形成および維持においてどのように機能しているかを調べるため、中枢神経系におけるDRL遺伝子発現細胞の性質を解析しようと考えた。まずは野生型の成獣マウス脳のコロナル切片サンプルを用いて、遺伝子発現の検出方法としては感度の高い特殊なin situハイブリダイゼーション法を用いる。これにより、DRL遺伝子発現細胞の分布について詳細な全脳的マップを作製する。さらに、これまで報告されていたレム睡眠制御に関連する神経領域において発現があるのかを調べる。また、各種分子マーカーを用いた二重in situ法もしくは免疫染色との組み合わせにより、DRL遺伝子発現細胞の細胞種および神経伝達物質サブタイプなどについて解析を行う。これらにより、発現細胞が、どの神経核領域が主要な発現部位で、どのように働く(抑制性・興奮性など)のかを調べることで、どのようにレム睡眠行動制御回路において機能しているのかを明らかにしようと試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新規睡眠関連遺伝子DRLの発現を検出する方法として、ViewRNA ISH法と呼ばれる感度の高い特殊なin situハイブリダイゼーション法をaffymetrix社より導入し、野生型成獣雄マウス脳の前額断切片を吻側より尾側へ一定距離ごとに採用しサンプルとして用い、DRL遺伝子発現細胞の神経領域内分布について同定することを試みた。その結果、当初予想していた限局的な発現ではなく、意外なことに嗅球、大脳皮質および海馬、視床や視床下部を含む間脳領域、中脳、小脳、脳幹橋、延髄、脊髄などの、中枢神経系に該当するほとんどすべての領域で、その強弱はあるものの発現している様子がみられた。しかしながら、それらの中でも特に、記憶に深い関連がある海馬のCA1・CA3・歯状回(dentate gyrus)における顆粒細胞層、情動行動に関わる扁桃体(Amygdala)や手綱核(Habenular nucleus)、睡眠や概日リズム形成に関わる神経領域である視交叉上核(SCN)、全身の恒常性制御に関与する視床下部の亜核である室傍核(PVN)や腹内側核(VMH)や弓状核(Arc)、呼吸中枢として知られる吻側腹外延髄のretrotrapezoid nucleus(RTN)などの領域で強い発現がみられた。これらのDRL遺伝子の強い発現が確認された領域の中でも、手綱核や海馬はレム睡眠時のシータリズムの出現に関与することが報告されており(Aizawa et al, The Journal of Neuroscience, 2013)、また背側脳幹橋の一部のニューロンはレム睡眠の制御に関与することが報告されている(Hayashi et al., Science, 2015)。加えて、二重in situ法により、DRL発現神経細胞には興奮性のものや抑制性のものがあることがわかった。 以上より、レム睡眠減少の原因遺伝子DRLの発現パターンについて、成体期マウスにおける詳細な全脳的マップが得られたことにより、本年度の研究実施計画における当初の目的は達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究推進方策として、どのようにしてDreamless変異マウスに特徴的な睡眠覚醒様式の変化が現れるのか、新たなDRL遺伝子改変マウスを用いた脳へのウイルスベクター注入実験によって、その原因を明らかにしていきたい。本年度の研究過程において、共同研究として筑波大学の生命科学動物資源センターとのDreamless-floxノックインマウス作成実験も平行して進んでいることから、平成28年度の秋頃にはCreリコンビナーゼタンパクを強制的に発現させるウイルスベクターを用いた、脳内局所微量投与によるloss-of-function実験も開始できることが期待される。これにより、神経領域特異的にDreamless遺伝子を欠失させることが可能となり、Dreamless遺伝子がレム睡眠を制御する神経回路において、いったいどの部分で機能しているのかを明らかにできる可能性がある。ウイルスベクター注入部位の選定については、Dreamless遺伝子の脳内発現パターンを調べたin situハイブリダイゼーション実験から得られた情報より、特に顕著に発現が強い領域を優先的に候補に挙げ、その中でもこれまでレム睡眠制御と関連があると報告されている脳部位をターゲットにする予定である。さらに、DRL発現細胞の性質について各種神経細胞種マーカーあるいはグリア細胞マーカーなどとの蛍光二重in situハイブリダイゼーション法や免疫組織化学染色法を用いて詳細に調べる。Hu(神経細胞)、GFAP(アストロサイト)、NG2(オリゴデンドロサイト)、Vgat(GABA作動性神経細胞)、Vglut2(興奮性神経細胞)、TH(ドーパミン作動性)、5-HT(セロトニン作動性)、HDC(ヒスタミン作動性)などのマーカーを使用する。また、野生型マウス脳スライスを用いてパッチクランプによるex vivo電気生理実験をDreamless発現神経細胞において行う。
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] The retrotrapezoid nucleus neurons expressing Atoh1 and Phox2b are essential for the respiratory response to CO22015
Author(s)
Ruffault PL, D'Autreaux F, Hayes JA, Nomaksteinsky M, Autran S, Fujiyama T, Hoshino M, Hagglund M, Kiehn O, Brunet JF, Fortin G, Goridis C.
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Journal Title
Elife
Volume: Apr 13;4
Pages: No info
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research / Acknowledgement Compliant
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