2015 Fiscal Year Research-status Report
クロノタイプと気分変動の関連に対する位相角差とストレス反応の寄与
Project/Area Number |
15K18983
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
北村 真吾 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神生理研究部, 室長 (80570291)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 社会的ジェットラグ / クロノタイプ / 朝型夜型 / 気分状態 / 精神健康度 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、夜型指向性にみられる気分状態低下の基盤としての概日リズム位相角差の存在を検証するとともに、位相角差に対するストレス反応の関与を隔離実験による精密評価によって明らかにすることである。本年度は、位相角差の指標であるsocial jet-lag(社会的ジェットラグ)の程度が、夜型指向性にみられる気分状態低下の検証を行った。社会的ジェットラグとは、社会的な時間と生物時計の不一致によって生ずる短期的な時差状態である。 調査対象者は20~39歳の健常成人男女450名であり、クロノタイプ(MEQ、MCTQ)、睡眠習慣(PSQI)、精神健康度(K6)を実施した。 MCTQでの遅いクロノタイプは中間的クロノタイプに比べ、従来の報告どおり調整なしのモデルにおいて低い精神健康度の有意なリスクとなった(Odd Ratio(OR)=3.1, 95% CI:1.7-5.8)。この関係は、年齢、性別、肥満度(BMI)、平均睡眠時間、睡眠状態を調整したモデルにおいても維持されたが、社会的ジェットラグを投入したモデルで有意でなくなった。一方、1-2hの社会的ジェットラグをもつ群は0-1hの社会的ジェットラグをもつ群に対して、低い精神健康度の有意なリスク(OR=2.0、1.1-4.0)となった。MEQでの夜型は中間型に比べ、調整なしで低い精神健康度の有意なリスク(OR=2.5, 1.2-5.1)であり、社会的ジェットラグを調整しても維持された(OR=2.2, 1.0-5.0)。このモデルでは社会的ジェットラグ(1-2h)も独立したリスク因子となった(OR=2.1, 1.1-4.1)。 本研究の結果から、MCTQでの遅いクロノタイプにみられる気分状態の低下は社会的ジェットラグによって媒介され、MEQにみられる夜型での気分状態低下は社会的ジェットラグとは独立していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
疫学調査については予定通り完了したが、位相格差による気分変動にみられるストレス反応系の媒介を評価する生理実験の実施が遅れているが、次年度に計画通り遂行する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
隔離実験により、夜型指向性における気分状態低下に対する、習慣的睡眠時刻と概日リズム位相との時間的関係(位相角差)の関連を、コンスタントルーチン法を用いた精密測定により明らかにする。さらに、位相角差と気分状態の関連に対する種々のストレス反応(HPA、SNS、免疫系、炎症性反応)の関与を検証し、ストレス反応の関与を明らかにする。
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Causes of Carryover |
隔離実験の実施が遅れ予算の余剰が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度に計画した実験を遂行することで当初予定通りになる見込みである。
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Research Products
(1 results)