2015 Fiscal Year Research-status Report
臨床応用を目的とした新規心不全治療薬、ホスホランバンアプタマーの開発
Project/Area Number |
15K18989
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
酒井 大樹 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40464367)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 心不全治療薬 / ホスホランバン / アプタマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、心筋特異的な膜タンパク質であるホスホランバンに特異的に結合することにより、心筋小胞体へのCa2+取り込みを促進する核酸アプタマーを新たな心不全治療薬として臨床応用することを目的とする。これまでの研究で、in vitroで心筋小胞体のCa2+の取り込みを促進し、単離心筋細胞レベルで収縮と弛緩能を著明に促進することが出来る細胞膜透過性ペプチドを付加したホスホランバン・アプタマーを開発してきたが、これを臨床応用するためには、生体内で効果が長時間持続する安定型に改良する等のアプタマー配列の最適化を行い、薬物動態を検討し、実験動物を用いて心機能の改善効果を評価する必要がある。 今年度は、まずホスホランバン・アプタマーの配列の最適化や安定性を検討した。ホスホランバン・アプタマーを両端より短縮した欠損体を合成し、心筋小胞体のCa2+取り込み活性を維持できるアプタマーを探索したところ、完全長のアプタマーと同等の活性を持つ15merのアプタマーを得ることに成功した。得られたアプタマーの生体内での安定性を評価するため、血清に混合したアプタマーの分解性を解析した結果、24時間までほとんど分解されないことが示された。また、本アプタマーは成獣ラットより単離した心筋細胞の収縮能を促進した。 次に、心不全モデルマウスを用いてアプタマーの心臓への送達及び心機能の改善効果を検討したところ、一部のマウスでは心機能の改善効果が認められたが、一貫した結果が得られなかった。また、アプタマーの心臓への特異的な集積は認められなかった。 以上の結果より、最適化したホスホランバン・アプタマーを新たな心不全治療薬として臨床応用するためには、体内薬物動態や心臓への送達方法について詳細に検討する必要があると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、ホスホランバン・アプタマーを臨床応用するために、その配列を最適化することができた。また、得られたアプタマーが血中で高い安定性を示すことを確認でき、本研究は概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、生体内で安定なホスホランバン・アプタマーの最適化に成功したが、心臓への送達については検討の必要が考えられた。今後は、実験動物を用いた本アプタマーの薬物動態を詳細に解析し、心臓への送達についてさらに検証を行う。また、正常マウスや心不全モデルマウスに本アプタマーを投与し、心機能ならびに治療効果について検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
購入予定の試薬の納品が期日までに間に合わなかったことや、試薬購入費を当初の見積もり以下に抑えることができたため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
納品期日が間に合わず購入できなかった試薬類や、実験動物の購入及び維持・管理費としての使用を計画している。
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