2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K18994
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Research Institution | Showa Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
土屋 幸弘 昭和薬科大学, 薬学部, 講師 (30455406)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 活性イオウ分子 / 翻訳後修飾 / リン酸化修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
システインパースルフィドなどの活性イオウ分子は、生体内で様々な働きをすることが近年大きな話題となっている。シスタチオニン β-シンターゼ(CBS)およびシスタチオニン γ-リアーゼ(CSE)は活性イオウ分子を産生する酵素として注目されているが、CBSおよびCSE自身の翻訳後修飾に着目した研究はほとんど行われていない。よって本研究はCBS、CSEの翻訳後修飾に着目し研究を行っている。 CBSについて、平成27年度は、その活性に直接影響を与えるリン酸化修飾の発見を目指し研究を行った。CBSのある1つのセリン残基のアラニン置換体、およびアスパラギン酸置換体を作製しその活性を測定したところ、いずれもその活性は認められなかった。よってこのセリン残基はCBS活性に大きく影響を及ぼすことが判明し、このセリン残基のリン酸化修飾こそがCBS活性に直結するリン酸化修飾であると考えられる。したがって、CBSセリン残基リン酸化部位特異的抗体の作製を行った。また、このセリン残基を含むCBSペプチドを基質として、質量分析を用いたリン酸化修飾の検出を行った。 CSEについて、平成27年度は、CSEのすべてのシステイン残基のそれぞれのバリン置換体のうち、活性が認められない2つの置換体に着目し検討を行った。2つの置換体について硫化水素検出プローブおよび活性イオウ分子検出プローブを用いその反応性を検討したところ、大変興味深いことに、1つのシステイン残基バリン置換体は両プローブで活性が認められないのに対し、もう一方の置換体は硫化水素検出プローブでは活性が認められないものの、活性イオウ分子検出プローブでは活性を確認することができるという知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書等では全体の計画をステージ1からステージ3に分類した。すなわち、ステージ1「翻訳後修飾の検出」、ステージ2「翻訳後修飾の部位の同定」、ステージ3「翻訳後修飾の意義の解明」の3つである。 CBSについてはその活性に重要なセリン残基を同定し、このセリン残基に着目し研究を行うとともに、このセリン残基リン酸化部位特異的抗体の作製を行った。この抗体は、今後本研究を遂行するにあたり、非常に有益なものである。 CSEについては我々が作製した全てのシステイン残基バリン置換体の中で、その活性が認められない2つの置換体について検討を行った。硫化水素検出プローブおよび活性イオウ分子検出プローブそれぞれを用いて検出を試みた結果、1つのシステイン残基バリン置換体は両プローブで活性が認められないのに対し、もう一方の置換体は硫化水素検出プローブでは活性が認められないものの、活性イオウ分子検出プローブでは活性を確認できるということが判明した。この原因はまだ不明であるが、CSEの構造変化による、CSEの基質親和性もしくは基質選択性による、生成された活性イオウ分子によるCSEの自己修飾が関与する、等が考えられ、大変興味深い結果である。 以上のことより、おおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度はステージ1「翻訳後修飾の検出」、ステージ2「翻訳後修飾の部位の同定」の継続実施から、ステージ3「翻訳後修飾の意義の解明」の実施に向けて研究を遂行する。 CBSについては、平成27年度に明らかにした、活性に直結するセリン残基に起こるリン酸化修飾に着目し研究を行う。すなわち、このセリン残基をリン酸化修飾するリン酸化酵素の同定、およびこのリン酸化修飾が起こるシグナルの解明である。また平成27年度に作製したCBSセリン残基リン酸化部位特異的抗体を用いた免疫染色を行うことで、その体内動態や細胞内局在を明らかにしたいと考えている。加えて著しい酸化ストレスを生じる一過性脳虚血モデルなどの病態組織の免疫染色を行うことで、CBSリン酸化修飾の生体内での働きの解明を行う予定である。 CSEについては、その活性が認められない2つの置換体について引き続き検討を行う。この活性喪失およびプローブ反応性の違いを明らかにすること、加えて我々が作製した全てのCSEシステイン残基バリン置換体の解析を引き続き行うことで、CSEの翻訳後修飾による制御の一端が解明できると考えている。
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