2015 Fiscal Year Research-status Report
概日リズムを呈するmicroRNAによる神経変性防御機構の解明
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15K18995
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
木下 千智 帝京大学, 医学部, 助教 (10567085)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | GTRAP3-18 / miR-96 |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでの研究によりグルタチオン量決定に関与するGTRAP3-18におけるmiR96による制御は、GTRAP3-18の RNA結合タンパク質の介在による可能性が示唆されたため、本研究ではこのRNA結合タンパク質を同定し、miR96結合阻害剤のスクリーニングをすることで、グルタチオン量及び神経保護作用を上昇させる新規薬物の探索と分子標的時間治療の確立を目的としている。現在までに行った研究は以下である。 マウス黒質緻密部から抽出したRNAから逆転写を行いcDNAを作成した。そこからGTRAP3-18の3’非翻訳領域をクローニングし、それを鋳型にT7RNAポリメラーゼでRNAを合成した。合成RNAはさらにビオチン化し、アビジンを結合した分離精製磁気ビーズに固定化した。このビーズを用いてマウス黒質緻密部抽出液と反応させ、結合したタンパク質をSDS-PAGEにて分離した。結果、コントロールと比較してGTRAP3-18の3’非翻訳領域RNA配列に特異的に結合していると考えられるタンパク質のバンドが5つ得られた。この5つのバンドをゲル片として切り出し、液体クロマトグラフィー質量分析を受託業者に依頼した。 分析条件として次のような記載があった。「ゲル片を1mm角に細切りし、ジチオスレイトールによる還元、ヨードアセトミドによるアルキル化の後、トリプシンにて酵素消化を行った。酵素消化液は回収後減圧乾固し、0.1%ギ酸溶液に再溶解後遠心して上清を分析に用いた。」解析の結果、GTRAP3-18 3’非翻訳領域のRNA配列に特異的に結合すると考えられるタンパク質の候補が各サンプルにつき、36~66個得られた。この中から、miR96が標的とするタンパク質をデータベース解析によりさらに絞り込んだところ、12個のタンパク質が得られた。現在は、特に配列特異性の高いRNA結合タンパク質から順次解析を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
現在までに当初の予定より、1ヵ月程度遅れている状況である。 理由は、当初ビオチン化した合成RNAを固定化した分離精製磁気ビーズを用いてマウス黒質緻密部抽出液とそのまま反応させ、結合したタンパク質をSDS-PAGEにて分離したが、多数のバンドが得られてしまったたため、コントロールと比較してGTRAP3-18の3’非翻訳領域RNA配列に特異的に結合していると考えられるタンパク質のバンドが、多数のバンドに埋もれてしまい同定し難くなってしまったためである。この事態を打開するために、マウス黒質緻密部抽出液はビオチン化合成RNAを固定化した分離精製磁気ビーズと反応させる前に、まず何も固定化していない分離精製磁気ビーズと反応させ、非特異的なバンドを減少させる操作を行った。この処置が功を奏し、特異的なバンドが5つ得られた。 さらにバンドの分離に1次元電気泳動を用いたため、分離しきれないタンパク質が同じバンド内に混入したため、1サンプルにつき複数のタンパク質候補が出てきてしまったため、その絞り込みに時間を要した。その際には、miR96の標的配列に対するデータベース解析を用い、mirSVRスコアと呼ばれる標的配列の特異性に対する指標にてさらに候補の絞り込みを行った。その結果、現在までに候補は12個のタンパク質まで絞り込んでいる。これ以上の絞り込みは現時点で不可能と考え、このまま計画を次の段階、即ちmiR96による機能解析に進める。もしこれらの候補に目的のものがない場合は、2次元電気泳動による再解析を考慮する。
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Strategy for Future Research Activity |
多少の遅れはあるものの、現在までに研究は計画通り順調に進んでいる。そのため今後の研究は、概ね計画書通り次のように進める。(1)絞り込んだGTRAP3-18の3’非翻訳領域NOのRNA結合タンパク質候補よりmiR96に直接的制御をうけるRNA結合タンパク質を見つけ出す。(2)RNA結合タンパク質の発現量を操作することによりGTRAP3-18発現量やグルタチオン量、さらに神経保護作用への影響を調べる。(3)RNA結合タンパク質に対するmiR96結合阻害剤のスクリーニングを行う。(4)in vivoにおいてスクリーニングされた阻害剤を時間依存的に投与し酸化ストレス抵抗性へ影響があるか試験を行う。
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Causes of Carryover |
研究の進捗状況が若干遅れているためである。研究の次段階であるmiR96によるRNA結合タンパク質の機能解析に関する研究試薬を未購入のため次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度使用額は、当初の計画にはあったが当該年度に実施できなかった実験の試薬の購入にあてる。具体的には、microRNA試薬、リポータージーンアッセイ試薬、クローニング試薬、定量的PCR試薬、グルタチオン量測定試薬、活性酸素種測定試薬等である。
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