2015 Fiscal Year Research-status Report
新規オートファジーのメカニズム解明と疾患治療薬開発への応用
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15K19004
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
本田 真也 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (90532672)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オートファジー / 赤血球 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに胎仔期の赤血球分化時のミトコンドリアの除去にUlk1を介した新規オートファジーが重要であることを明らかにしてきた。本研究では、新規オートファジーの実行機構探索のため、野生型と新規オートファジー欠損(Ulk1KO)マウスの胎仔網状赤血球から膜画分を単離し、発現パターンの異なるタンパク質をプロテオーム解析により解析した。 2次元電気泳動の結果、いくつかパターンの異なるスポットがみられたが、そのうちの1つがPLA2活性を持つタンパク質であることが明らかになった。このタンパク質はPLA2活性の異なる2つの形を持つことも知られており、今回の2次元電気泳動の結果からPLA2活性の高いものが野生型において強く発現していることが明らかとなった。今後はこの分子及びPLA2活性と新規オートファジーの関わりを解析予定である。 またUlk1KO赤血球においてK48ユビキチン化タンパク質の蓄積が明らかとなった。そこでE3ユビキチンリガーゼに着目し、野生型とUlk1KOの赤血球分化時に発現変動するE3リガーゼをMicroarrayの結果から選出した。その結果多くのE3ユビキチンリガーゼが赤血球分化と共に発現変動しており、野生型とUlk1KO間で変動パターンの異なるものも多く確認された。これらの遺伝子について、遺伝子導入と新規オートファジーの解析系が確立されているMEFを用いて解析を行った。遺伝子過剰発現、及びsiRNAによるノックダウンの結果、数種類のE3ユビキチンリガーゼが新規オートファジーに関与している可能性が示唆された。現在CrisprシステムによりこれらのKOマウスを作製中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
赤血球を用いて新規オートファジーの実行分子を探索中である。赤血球を用いた解析から新規オートファジーに関与しうる新たな候補分子が数種類明らかとなった。当初は、MEFの解析より明らかとなっていた、Ulk1以外の新規オートファジー関連タンパク質のKOマウスを解析して、赤血球における新規オートファジーのどの段階で変調が見られるかを解析する予定だったが、現在までに解析したKOマウスにおいて赤血球における変化は見られていない。しかしながら、ユビキチン化という観点から解析を行い、新たな候補分子の単離に成功した。現在CrisprシステムによるKOマウスも作成中であり、KOマウスが出来次第詳細な解析を行う予定である。また、野生型とUlk1KOの網状赤血球を比較した2次元電気泳動による解析からも新規候補分子を明らかにしているが、未解析のスポットがまだ残されているため、それらもプロテオーム解析により明らかにしていく。
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Strategy for Future Research Activity |
新規オートファジーは赤血球分化時に重要であることは明らかであるが、いまだその詳細なメカニズム及びマーカーとなるタンパク質も明らかになっていない。 現時点までの解析からPLA2活性を持つタンパク質が1つの候補分子として新たに明らかとなった。今後はこのタンパクのPLA2活性などが新規オートファジーに関与し得るかをMEF及び赤血球培養系を用い解析していく。またCrisprシステムによるKOマウス作製も予定している。さらに、野生型とUlk1KOの網状赤血球を比較した2次元電気泳動において発現パターンに違いの見られた未解析のスポットについても解析を進めていく。 また、Ulk1に直接結合するタンパク質やミトコンドリア側のEat Meシグナルについても明らかにしていく。今回の解析からK48ユビキチン化が1つのEat Meシグナルの候補として考えられ、数種類のE3ユビキチンリガーゼの関与が示唆された。今後は、現在作成中のKOマウスを用い、より詳細なメカニズムの解析を行う予定である。これらの解析により新規オートファジーのマーカーとなるタンパク質が明らかになると考えられ、マーカータンパク質が明らかになれば、赤血球以外の細胞での新規オートファジーの関与を解析していく予定である。 また、これまでの解析から成体骨髄での赤血球分化時において従来型とも新規オートファジーとも異なるタイプのオートファジーの存在が示唆されているため、成体と胎仔での違いについても、プロテオーム解析などを用いることで詳細を明らかにしていく。
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