2016 Fiscal Year Annual Research Report
Roles of extrinsic factors in the cortical expansion in primates.
Project/Area Number |
15K19011
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
畠山 淳 熊本大学, 発生医学研究所, 助教 (90404350)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 大脳皮質 / 霊長類 / 神経幹細胞 / 進化 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトは高度な知能を持っており、この他の動物との明らかな違いは脳に起因する。高度な知能をもつヒトに代表される霊長類は、他の哺乳類と比較して際立って大きい大脳皮質を獲得し、神経回路も発達やシワ(脳溝)も形成もみらる。一方、マウスの大脳は、小さく脳溝が全くない。神経発生の基本原理は、ほ乳類間でほぼ同じと考えられているのに、種間の脳の「違い」はどうやって形成されるのか?その機構はまだほとんどわかっていない。 我々は、霊長類が大きな脳を獲得した機構を解明するために、マウスとカニクイザルを比較し、カニクザル胚の脳に特異的に発現する分泌因子を複数同定した。これらの因子が霊長類の神経幹細胞にどのように作用するのか検討するため、ES由来のヒト神経幹細胞を用いて機能解析を行った。その結果、候補因子は、ヒト神経幹細胞の増殖を促進した。実際に、神経幹細胞をカニクイザル胚の脳脊髄液10%で培養すると、通常の培養条件より増殖が著しく促進される。この脳脊髄液を用いた培養に置いて、候補因子の中和抗体を用いて候補因子の機能を阻害すると、脳脊髄液による増殖効果の一部が抑えられた。このことから、カニクイザル胚の脳脊髄液による神経幹細胞の増殖効果の一端は、候補因子が担っていることが示唆される。 さらに、これらの候補因子がマウスの大脳を大きくすることができるのか検討するために、マウス大脳の脳室に候補因子のタンパク質を注入する実験、及び、候補因子をエレクトロポレーション法にて大脳に持続発現させる実験を行うと、マウスの大脳の拡大が観察された。以上より、これらの候補因子が霊長類の発生期の脳で発現することが、脳の大きさの違いをもたらす1つの仕組みである可能性が示唆された。
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