2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K19012
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
河野 恵子 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (30632723)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 老化 / 出芽酵母 / 細胞老化 / ストレス / 脂質 |
Outline of Annual Research Achievements |
出芽酵母では損傷を受けた細胞膜が修復されると、傷の部分で細胞膜を構成する脂質の種類が変化する。興味深いことに、ヒト培養細胞においても、膜損傷により脂質構成の変化と細胞老化の誘導が観察された。この時の傷の周辺の形状を超微細構造まで観察する目的で、細胞膜に損傷を与えたヒト培養細胞を材料とし、FIB-SEMで電子顕微鏡の連続像を自動取得し、三次元立体像を構築して解析した。その結果、損傷を受けた細胞膜には突起状構造(これ以降「傷跡」と呼ぶ)が多数形成されていることが見出された。何も処理していない細胞では表面は滑らかであった。興味深いことに、何も人工的な損傷を与えることなく、繰り返し分裂させることのみによって老化させた細胞の表層にも多数の傷跡が見つかった。 そこで、この突起状構造が細胞老化の原因であるかどうかを検討するために、遺伝子操作により突起状構造を取り除いたところ、出芽酵母細胞の寿命は延長された。つまり、細胞膜に残った「傷跡」が細胞老化の一因であることが明らかになった。 次に、老化した細胞は膜修復に欠損があるかどうかを検討した。人工的な傷を与えなくても細胞膜に多数の「傷跡」を持ち寿命が短くなっている出芽酵母変異株を用いて、細胞膜の強度を調べた結果、この変異株では弱い刺激によって細胞膜が断裂し細胞が破裂することが明らかになった。このことは老化細胞で細胞創傷治癒が低下していることを示唆している。 以上より、細胞膜の損傷とそれによる脂質構成の変化が、出芽酵母とヒト培養細胞に共通の細胞老化の一因であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りの進展に加え、平成28年度に予定していた研究の成果も一部得られているため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の計画通り着実に研究を進めて行きたいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度は試薬が安価である出芽酵母を中心に実験を行ったが、次年度は培養細胞を用いて新たに実験系を立ち上げる計画であるため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
培養細胞を本格的に開始するための試薬を購入する。
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