2016 Fiscal Year Annual Research Report
Molecular mechanisms for plasma membrane damage-dependent cellular senescence
Project/Area Number |
15K19012
|
Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
河野 恵子 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (30632723)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 細胞創傷治癒 / 細胞老化 |
Outline of Annual Research Achievements |
細胞は増殖の過程で細胞膜に様々な環境ストレスを受け、傷つく。傷の周りにアクチンや微小管、Rho 型GTPase などが集まり、細胞質分裂とよく似た仕組みで速やかに行われる修復を「細胞創傷治癒(Cellular wound-healing)」と呼ぶ。これに欠損があるとデュシェンヌ型筋ジストロフィー症を発症するが、詳細な分子機構は未だ解明されていない。申請者はこれまでに細胞創傷治癒に関与する遺伝子を網羅的に同定し、膜損傷の修復後に細胞膜を構成する脂質の種類が変化して「細胞膜の老化」が起こり、それが細胞老化を誘導する一因となることを見出した。そこで本研究では損傷修復後の「細胞膜の老化」の本質を解析するとともに、その分子メカニズムを解明することを目指した。 その結果、細胞膜損傷による細胞老化誘導は特定の脂質の変化のみに依存するのではなく、細胞膜の曲率の変化等を含む複合的な要因によることが示唆された。そのような解析の過程で、出芽酵母細胞において細胞膜が損傷を受けると増殖を一時停止する「細胞膜損傷チェックポイント」が存在することが、全ての生物に先駆けて見出された(Kono et al., PNAS, 2016)。このチェックポイントはヒト培養細胞においても基本的な分子基盤は保存されていた。さらに細胞膜損傷はその損傷の程度に依存して1)細胞周期チェックポイント、2)細胞老化、3)細胞死という、異なった細胞運命を誘導するという、全く予期していなかった知見が得られた。 細胞老化は生体内におけるがん抑制機構の一つであり、細胞膜損傷による細胞老化には、細胞老化の主要な原因であるDNA損傷修復経路の活性化は必要ないことから、本研究の成果は既存のがん治療とは異なる角度からのがん治療法開発へとつながる可能性がある。
|
Research Products
(10 results)