2015 Fiscal Year Research-status Report
核内レセプターHNF4Aの変異による肝癌発症および悪性化のメカニズム解明
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15K19017
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
谷口 浩章 日本大学, 医学部, 研究員 (50587441)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 転写因子 / ゲノムシークセンス / がん |
Outline of Annual Research Achievements |
日本人肝臓がん患者のゲノムシークエンスを行った結果、肝臓がんにおいて一般的にがん抑制因子として働く核内レセプターHNF4Aの変異体が多数検出された。よって本研究においては、これらHNF4A突然変異体の機能解析および他の変異遺伝子との遺伝学的相互作用解析を行うことを目的とした。その結果、これら変異体の機能不全は特定の結合領域に対する結合親和性の低下が原因であることが明らかになった。また、その変異体がそのタンパク発現、核内局在に関係なく転写活性能を減少させることを明らかにした。さらに、HNF4A のZn fingerドメインおよびリガンド結合ドメインに顕著に変異が認められることが明らかになった。
すでに申請者はHNF4A結合配列を有するリポーターを作成し、配列依存的にHNF4A突然変異体の機能が変化するかについての検討を開始している。これまでに6種類のHNF4A突然変異体を作成し、特に3つの変異体においてはHNF4Aの転写活性が著しく低下することを明らかにしている。非常に興味深いことに、これらのアミノ酸配列は3次元構造上非常に近接した位置関係にあることが in silico の構造解析により明らかになっており、タンパク質の高次構造と変異のポジショニングの関係の重要性が示唆された。さらに、申請者はHLE、HLFといった非分化型の肝癌細胞株においてはHNF4Aの発現が高分化型の肝癌と比較して低いことを明らかにしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに前年度予定していた実験はほぼ終了しており、作成した変異体のLoss-of-Function作用が認められている。核内局在、発現等には全く問題がないことから、おそらくZnフィンガー領域に近接した変異が何らかの形でタンパクの高次構造を妨げ、それによりHNF4Aの機能が失われている可能性が考えられる。以上より、得られた結果について本年度中の論文投稿に向けて本申請で予定されている追加実験を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度中に得られた結果を学会発表するとともに投稿論文としてまとめ、発表することを目的とする。さらに遺伝子編集を行うことで人工的に遺伝子配列を変換したHNF4Aを発現する細胞を作成し、機能的な解析を行う予定である。また、臨床サンプルの解析からHNF4Aの遺伝子変異が認められるサンプルにはp53やb-cateninなどのドライバー遺伝子にも変異があることが明らかになっている。そこでHNF4Aおよびこれらドライバー遺伝子の両方に変異があった場合肝癌細胞にどのような変化が起こるかを検証する。
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