2015 Fiscal Year Research-status Report
HTLV-1 感染 T 細胞に おける TGF-beta の 役割
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15K19020
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
永野 佳子 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 助教 (10723819)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | HTLV-1 / ATL / 免疫抑制 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトT細胞白血病ウイルスI型(Human T cell Leukemia Virus-1; HTLV-1)は成人T細胞白血病(Adult T cell Leukemia; ATL)の原因ウイルスである。ATL患者ではHTLV-1特異的な免疫応答が抑制されており、その解除が求められるが、免疫抑制機序の詳細は明らかでない。代表的な免疫抑制性サイトカインであるTGF-betaおよびIL-10のATLにおける免疫抑制への関与が予想されるが、ATLの免疫抑制におけるその役割は十分解明されていない。本研究では、HTLV-1感染細胞の免疫抑制性サイトカイン産生能や、それらの感染細胞や免疫細胞に対する作用を明らかにすることを目指している。 今年度は、当研究室で樹立した感染者末梢血由来のIL-2依存性HTLV-1感染細胞株を用いて、TGF-betaやIL-10の産生量を測定した。用いた感染細胞株のTGF-beta産生量は非感染細胞株よりやや多い程度であり、IL-10は高産生する細胞株と極めて産生の低い細胞株を認めた。ATLにおける免疫抑制因子によるHTLV-1特異的CD8+T細胞の増殖制御を調べるため、今年度は健常人のCD8+T細胞でTGF-beta中和抗体を用いた実験系を至適化した。 また、感染細胞内におけるTGF-betaやIL-10の作用機序を調べるため、これらの細胞内シグナルを検出するレポーター遺伝子を導入した感染、非感染細胞株を作成し、シグナル伝達分子のウエスタンブロットや標的遺伝子の定量的PCR等の実験系を作成した。これらを用いた検討の結果、感染細胞株では有意にTGF-betaの応答性が弱いことが分かった。一方、IL-10は感染細胞の増殖を亢進する可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度は、所属研究室で樹立されたHTLV-1感染細胞株を用いて実験系を構築し、TGF-betaやIL-10に関する基礎データを収集した。また、TGF-betaとIL-10の感染細胞における作用を明らかにしつつあり、概ね順調と思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、今年度に引き続きHTLV-1感染細胞における免疫抑制性サイトカインのシグナル制御について検討を進めるとともに、ATLにおけるCD8+T細胞の増殖に対する免疫抑制因子中和抗体の効果を検討する。
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Causes of Carryover |
今年度は所属研究室内にすでにあった機器、器具、試薬等を用いて当該研究を進めることができ、新たに必要とする物品が多くなかったため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は、引き続き必要となるこれらの物品を補うとともに、今年度の研究結果に基づき新たに必要となる抗体や試薬等の高額消耗品、器具類を購入する予定である。
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Research Products
(3 results)