2016 Fiscal Year Research-status Report
線虫をモデルとした変異型ミトコンドリアゲノムの分配・蓄積機構の解明
Project/Area Number |
15K19029
|
Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
笠嶋 克巳 自治医科大学, 医学部, 講師 (80382844)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | ミトコンドリアDNA / 欠失型mtDNAの蓄積 / 線虫 / mtDNA分配 / TFAM |
Outline of Annual Research Achievements |
個体におけるミトコンドリアDNA(以下mtDNA)の分配・蓄積機構を調べるために、欠失型mtDNAと野生型mtDNAをヘテロプラスミックに保持する線虫株LB138を用いた。本年度は、これまでに構築した欠失型mtDNAの定量法を用い、線虫のTFAMホモログであるHMG-5のノックダウンやその他関連因子による欠失型mtDNA含有率への影響を調べた。L1幼虫ステージからその子(F1)が成虫に生育するまでRNAiを続けた後、親虫(P0)とF1からサンプリングを行い、リアルタイムPCRによる欠失型mtDNA含有率の定量を行った。その結果、HMG-5をノックダウンしても、P0とF1間の欠失型mtDNA含有率に有意な差は認められなかった。したがってHMG-5は世代を超えたmtDNAの分配調節には関与していないと考えられた。mtDNA分配の性質上、世代を超えた分配は関係ファクターが多岐にわたるため、解析結果の解釈が難しいと考えられる。したがって現在、RNAiを幼虫世代間で行い、当世代における欠失型mtDNA蓄積への影響を調べている。 ヒトTFAMの関連因子であるClpX、ミトコンドリア分裂因子であるDrp-1の遺伝子破壊線虫株をナショナルバイオリソースより入手した。これら破壊株の雄とLB138の雌雄同体を掛け合わせることにより、それぞれ二重変異株を作製・単離した。これら二重破壊株のL4幼虫よりDNAを調整し、欠失型mtDNA含有率を調べた。その結果、線虫ClpXのノックアウトでは大きな差がないが、線虫Drp-1ノックアウト株で欠失型mtDNA含有率が有意に減少した。また、核酸アナログであるmtDNAの複製阻害剤を用い、mtDNAのコピー数を減少させた時の欠失型mtDNA含有率をL4幼虫で調べた。その結果、欠失型mtDNA含有率に大きな差は見られなかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はこれまでに構築した欠失型mtDNAの定量法を用い、HMG-5のノックダウンなどさまざまな条件下で、実際に欠失型mtDNA含有率を調べることができた。まだ欠失型mtDNA含有率に大きな違いを誘導する条件はあまり見つけられていないが、Drp-1との二重変異株で欠失型mtDNA含有率の有意な減少が見られた。この結果は最近Nature誌に発表されたDrp-1のノックダウンによる効果と同じ傾向であることから、我々のアッセイ系がきちんとワークしていることが示された。したがってこれまでのところ順調に研究が進んでいると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在HMG-5ノックダウンによる幼虫世代での欠失型mtDNA含有率を調べているところであり、まずはHMG-5が欠失型mtDNAの蓄積にどのような影響を与えるのか明らかにする。TFAM関連因子については、mtDNAヌクレオイドの構成維持に関わるProhibitin 1や、TFAMを分解してその発現量を調節することが知られるLonプロテアーゼの影響を調べる。これら2因子のノックアウト線虫株は致死もしくは不妊であることから、HMG-5同様にフィーディングRNAiによるノックダウンを行う。その他mtDNAヌクレオイド動態に関わる因子や、ミトコンドリアのオートファジー(ミトファジー)に関わる因子のノックダウンもしくはノックアウトの影響を調べる。 ヒトTFAMのノックダウン細胞ではmtDNAの凝集を介した分配阻害が観察される。個体においてmtDNAの分配異常によるmtDNAの凝集が観察されるか調べるために、線虫におけるmtDNAの可視化システムを構築する。SYBR Green Iを含む寒天培地で培養することで、線虫体内で一部のmtDNAが染色されていることが確認できたが、まだ再現性が低い。したがってまずはこれら条件の最適化を行う。一方で蛍光in situハイブリダイゼーションシステムを構築し、線虫におけるmtDNAの形態観察系を完成させる。
|
Causes of Carryover |
参加した国際学会が日本で開催されたため、学会参加にかかる旅費・交通費が少なくなったため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の予定通り、研究費の多くは酵素や試薬などの消耗品費として使用する。また論文発表のための校正費用や雑誌への投稿・掲載料としての使用も予定している。
|
Research Products
(3 results)