2015 Fiscal Year Research-status Report
細胞外マトリクス環境変化誘導性のマクロファージ泡沫化を標的とする新規動脈硬化療法
Project/Area Number |
15K19034
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
伊豫田 拓也 東京理科大学, 薬学部, 助教 (80465715)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 動脈硬化 / 泡沫化 / インテグリン / ABCA1 / ABCG1 |
Outline of Annual Research Achievements |
炎症局所限定的に高発現する細胞外マトリックス分子の1つにテネイシンC (TNC) がある。申請者は最近、TNC 分子内の一部領域である「TNIIIA2」 領域が、マクロファージ (Mφ) に泡沫化(脂質過剰蓄積)を誘導することを見出し、本作用の機序の詳細解明および TNIIIA2 介した Mφ 機能調節を標的とする新規動脈硬化治療法の創成が、本研究課題の目標である。H27年度に得られた観察を以下に挙げる。 1) TNIIIA2 誘導性 Mφ 泡沫化の端緒として、脂質排出輸送体である ABCA1, ABCG1 の mRNA レベル低下を見出していたが、タンパク質レベルで確かに低下することを確認した。現在までに膜発現レベルに着目した評価を遂行中である。 2) TNIIIA2 と同様の作用点を持つ別の刺激剤を用いても、Mφ 泡沫化の鍵となる①貪食能の亢進、および②脂質輸送体発現の抑制、がともに TNIIIA2 と同様に認められたことから、TNIIIA2による Mφ 泡沫化亢進作用の作用点が明らかとなった。 3) 2) で明らかとなった作用点について、TNIIIA2 とは真逆の活性を有するペプチド-X を我々は既に有しているが、TNIIIA2 誘導性の Mφ 泡沫化は、本ペプチドの投与により顕著に抑制された。 4) 3) に付随し、TNIIIA2 誘導性 Mφ 泡沫化の機序と考えられた貪食の亢進および ABCA1, ABCG1 発現抑制が、ペプチド-X の投与によりキャンセルされた。 これらの結果より、TNIIIA2 による Mφ 泡沫化誘導の作用点が明らかとなり、ペプチド-X が新たな動脈硬治療薬剤候補となる可能性を示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
申請書には教室所属学生1名の協力を得られる旨を記したが、配属学生「数」の問題から代表者のみで本課題を遂行することとなり、H27 年度に予定した項目の完遂には至らなかった。一方で現在得られている結果は想定外の対応を必要とするものではなく、かつH28年度の"新規"解析項目としては in vivo での解析を中心としていること、さらに初期計画においても in vitro 解析を一部 H28 年度も継続する予定としていたことから、当初の計画は十分に達成可能と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
H27 年度の成果より、炎症性病態局所に高発現する細胞外マトリクス分子・テネイシンC の分子内領域 TNIIIA2 が、動脈硬化の病態進展において端緒となる Mφ の泡沫化を亢進する機構の一部が明らかとなり、ペプチド-X の Mφ 泡沫化抑制効果が明らかとなった。そこで H28 年度はペプチド-X について、その動脈硬化病態改善効果、もしくは病態進展の遅延効果の有無を、動脈硬化モデルマウスを用いて評価する(LDLR-KO or ApoE-KO 使用予定)。また平成27年度成果として明らかにした、TNIIIA2 が Mφ の泡沫細胞化を齎している 1) 貪食亢進 および 2) ABCA1/G1 発現抑制に関し、TNIIIA2 の作用点より表現型発現に至る機序の詳細を明らかし、新たな創薬標的の探索を行う。
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Research Products
(6 results)