2015 Fiscal Year Research-status Report
脂質異常に着目した悪性リンパ腫の層別化と新規治療戦略開発のための基礎的研究
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15K19048
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
山本 浩平 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (50451927)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 悪性リンパ腫 / 脂質 / 質量分析 / イメージング / ホジキンリンパ腫 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨今のゲノミクスの劇的な発展により、悪性リンパ腫をはじめとした悪性腫瘍に生じる遺伝子異常が一塩基のレベルで解読さている。一方で、従来の脂質の解析はその性質上DNAに直接コードされている分子ではないため、核酸やタンパク質と比較すると分子生物学的手法の適用に限りがあった。本研究は悪性リンパ腫における脂質代謝・分布の異常が病態に大きく関与しているという仮説に基づき、近年開発された最新の手法を用いて脂質の異常を網羅的かつ包括的に捉え、病態の新たな層別化と新規治療戦略開発の知見を得ることを主な目的としている。具体的には、近年開発された質量顕微鏡を用いて研究を進めていく。質量顕微鏡法は凍結切片にレーザーを当ててその箇所に分布している脂質を検出し、それにより得られた脂質ごとの二次元分布図と顕微鏡画像を重ね合わせることによって分布とシグナルの多寡を可視化することができる。本研究では、古典的ホジキンリンパ腫内に散在性に存在するホジキンリンパ腫細胞に特異的に分布する脂質を同定し、同定された脂質の多寡や有無に基づいて臨床病理学的な検討を行うことにより、その脂質の量的・分布的異常の意義を捉えることを目的とする。本年度は16例の古典的ホジキンリンパ腫組織を用いて質量分析顕微鏡による網羅的脂質探索を行った。そのうち9例では良好な脂質シグナルが確認され、複数のリンパ腫細胞に共通する脂質を見出すことに成功した。今後はMS/MS法を用いて詳細な脂質の構造の特定を行うとともに、詳細な臨床病理学的な相関を検討していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では東京医科歯科大学付属病院にて採取され、ホジキンリンパ腫と 診断された症例の残余冷凍検体から切片を作成し使用している。ホジキンリンパ腫の中でも、古典的ホジキンリンパ腫のみを扱っている。質量分析法(MS)に使用した全症例数は16症例であるが、現在のところそれらのうち9症例についての解析が進められている。質量分析器については浜松医科大学メディカルフォトニクス研究センターの質量顕微鏡iMScope(島津製作所)を使用し、測定は陰イオンを検出するネガティブイオンモードにより行った。解析方法についてはROI(Region of interest)解析によって行い、ホジキン細胞存在領域と反応性リンパ球領域(ホジキン細胞非存在領域)の2領域において比較を行った。その2領域において量的に有意な差が見られる脂質を検索し、さらにそれらのうち複数症例間に共通であるものを検索する。この方法により検出された脂質をホジキン細胞において特異的に発現している脂質として考える。現在解析を進めている9症例(うち再発性ホジキンリンパ腫5例)について、9症例全てに共通した量的に有意差のある脂質、すなわちホジキン細胞において特異的に発現していると考えられる脂質は現在のところ見つかっていないが、再発性ホジキンリンパ腫のホジキン細胞に特異的に発現していると考えられる脂質は複数見つかっている。また、陽イオンを検出するポジティブイオンモードにより、ネガティブイオンモードと同様の手法で解析を行った。ポジティブイオンモードによる解析の結果については、ホジキン細胞存在領域と反応性リンパ球領域において量的に有意差のある脂質のうち複数症例間に共通するものは現在のところ見つかっていない。
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Strategy for Future Research Activity |
イオン選択の観点からは、ポジティブイオンモードよりもネガティブイオンモードのほうが感度か高いことが判明したため、ネガティブイオンモードによる解析を進めているものについてはさらに症例数を増やし、ホジキン細胞に特異的に発現していると考えられる脂質を同定していく。新しく同定された脂質と現在までにすでに同定されている再発性ホジキンリンパ腫で特異的に発現していると考えられる脂質について、具体的な構造式の推定を行う。そのためにはまずMETLINやHMDBなどのデータベースから候補となる脂質をあらかじめいくつか決めておき、その後MS/MSによって構造式を推定する。MS/MSの際もMSの時と同様にiMScopeによって行う予定である。
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