2015 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍壊死が引き起こす栄養シグナル・浸透圧シグナルに着目したヒト膠芽腫の病態
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15K19055
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
石井 文彩 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (50634747)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 病理学 / 癌 / 細胞・組織 / 脳神経疾患 / 脳腫瘍 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度には、まず、ヒト膠芽腫由来細胞株であるT98G、U251MG細胞株を用いて、培地の浸透圧の変化に対する細胞の応答について検討した。他の細胞種では、浸透圧応答に関与する分子として、高浸透圧の時に発現が上昇するNFAT5分子と、発現が低下するSTAT3分子が報告されているので、T98G、U251MG細胞を通常の培地より50~100mOsmol/l上昇させた培地で処理し、Western blot法によりNFAT5、STAT3の発現レベルを調べた。その結果、STAT3の変化は明らかでなかったが、NFAT5は高浸透圧時に発現が上昇していた。また、RT-PCR法により、高浸透圧時にはNFAT5遺伝子の転写が促進していることが示唆された。通常の培地と高浸透圧培地中でコロニー形成アッセイを行ったところ、高浸透圧培地ではコロニー形成が抑制された。一方、高浸透圧培地で数日間培養した細胞を用いて通常の培地中でコロニー形成を行うと、コロニーの径が大きくなる傾向が観察された。この現象について、条件を種々に変化させてさらに検討中である。ヒト膠芽腫由来細胞株の栄養欠乏に対する反応については、増殖関連分子の発現調節を中心に検討した。T98G、U87細胞株をグルタミン欠乏培地、グルコース欠乏培地で培養したところ、GINSタンパク質の発現の低下を認めた。特にグルタミン欠乏時には、比較的早期より発現低下が始まることが示唆された。このように、浸透圧、栄養因子に対する膠芽腫細胞の応答について、興味深い知見を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
浸透圧、栄養因子に対するヒト膠芽腫細胞株の応答について、順調にデータを得ることができた。ヒト膠芽腫切除標本を用いた免疫組織化学的解析については染色の条件検討が遅れているが、研究全体としてはおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
浸透圧、栄養因子に対するヒト膠芽腫細胞の応答について、分子の発現変化や増殖の観点から、より詳しい解析を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成27年度の研究計画はおおむね順調に実施できているが、ヒト膠芽腫切除標本を用いた免疫染色の条件の最適化については検討が遅れており、その分の試薬費用等が次年度使用額となった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に、ヒト膠芽腫切除標本を用いた免疫組織化学的検討を予定しており、それに使用する計画である。
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