2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K19079
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
萩山 満 近畿大学, 医学部, 助教 (60632718)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 肺気腫 / 接着分子 / shedding / アポトーシス |
Outline of Annual Research Achievements |
肺気腫は肺胞の変性を特徴とする慢性閉塞性肺疾患である。肺気腫の発症に肺胞上皮のIgCAM型接着分子cell adhesion molecule 1(CADM1)の関与を発見した。CADM1は機能的制御のひとつとして、細胞外傍細胞膜領域で膜結合型メタロプロテアーゼADAM10等によって切断(shedding)される。肺気腫ではCADM1 sheddingが亢進状態にあり、その結果過剰に産生されるC末側断片がミトコンドリアに集積して、肺胞上皮のアポトーシスを促進していることを見出した。即ち、CADM1 sheddingの阻害により肺気腫の進行を抑制できる可能性がある。 本研究課題では、自身が見出した発症機序に基づいて肺気腫治療の創薬シーズを探索する。具体的には(1)CADM1のshedding部位領域に結合してsheddingを特異的に阻害するが、CADM1の接着分子としての機能に影響しない抗体を単離する、次いで、(2)ADAM10の気道強発現系による肺気腫モデルマウスに経気道的に投与し、組織学的な観察により治療効果が認められる抗体を選出する。 慢性閉塞性肺疾患の罹患者は500万人を越えると言われるが、その治療は対症療法のみで、根本的な治療法がない。本研究は、肺胞破壊の分子機序に立脚した肺気腫治療法の開発へと発展するものと期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
CADM1 shedding部位を含む合成オリゴペプチドに特異的に結合するDNAアプタマーの単離を外注したが、うまくいかなかった。何故うまくいかなかったか等については、外注先から明確な答えがなく、現段階では、DNAアプタマーの単離は難しいと考えている。 CADM1 shedding阻害抗体の作製は、shedding部位を含む合成オリゴペプチドをラットに免疫した。免疫を高めるため数回ブーストをかけたが、免疫がそれほど上がらなかった。そのため、個体数を増やしたり、合成ペプチドをいくつか試す必要があった。免疫はそれほど高まらなかったが、ハイブリドーマを作製し、候補となるモノクローナル抗体がいくつか単離できた。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)CADM1細胞外認識抗体によるELISAを作製し、shedding産物(細胞外断片NTFと細胞内断片CTF)の量を低下・消失させる(sheddingを阻害する)抗体を単離する。(2)単離した抗体存在下で細胞凝集アッセイを行い、IgCAMとしての機能(trans-ホモ及びヘテロな結合力)に影響しないものを選出する。(3)CADM1 shedding責任酵素であるADAM10を強発現させた肺上皮細胞の培養系に抗体を添加し、アポトーシスを抑制するかTUNEL法等で検定する。(4)ADAM10を強発現するアデノウイルスベクターを作製し、気道感染によって肺気腫モデルマウスを作出する。抗体を経気道的に投与し、肺気腫の重篤度を組織学的に判定して、治療効果を示すものを選出する。
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Causes of Carryover |
CADM1 shedding部位を含む合成オリゴペプチドに特異的に結合するDNAアプタマーの単離を外注したが、うまくいかなかった。1社しか外注をお願いしていないが、何故うまくいかなかったか等については、外注先から明確な答えが得られなかった。そのため、DNAアプタマーを単離するのは難しいと考えた。また、原因がはっきりしないので、他社への外注も考えていないため。 本研究の実施に当たっては、現有の設備を少し拡充したいと考えていたが、まだ環境整備が出来ておらず、申請した設備備品の購入に至っていないため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
環境整備を行い、申請した設備備品を購入し、本研究を遂行する。 単クローン抗体を作製するため、免疫原としては、①CADM1細胞外領域全長の組換え蛋白、②ヒトCADM1を恒常的に発現する細胞株(LMHニワトリ肝癌細胞等)、③shedding部位を含む合成オリゴペプチド、の3種を予定していた。現在、免疫原として③を用いてラットに免疫を行い、単クローン抗体をいくつか単離した。①、②を用いて同様に単クローン抗体を作製する。単離した抗体からCADM1のshedding部位領域に結合してsheddingを特異的に阻害するが、接着分子としての機能に影響しない抗体を選出する。ADAM10を強発現するアデノウイルスベクターを作製し、気道感染によって肺気腫モデルマウスを作出する。選出した抗体を経気道的に投与し、肺気腫の重篤度を組織学的に判定して、治療効果を示すものを同定する。
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Research Products
(5 results)