2016 Fiscal Year Research-status Report
新規ミューテーターマラリア原虫の開発と突然変異体創出システムの構築
Project/Area Number |
15K19089
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
本間 一 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (10617468)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | マラリア / Plasmodium falciparum / ミューテーター / MLH1 / MSH2 / CRISPR/Cas |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ゲノム編集技術CRISPR/Casシステムにより熱帯熱マラリア原虫で突然変異を蓄積しやすい変異体(ミューテーター原虫)を作製し、その特性の解明と効率的な突然変異体創出系の構築を目的としている。本年度は下記の実験を行った。 1) CRISPR/Casシステムによる熱帯熱マラリア原虫のゲノム編集技術の条件検討のため、赤色蛍光蛋白質を発現する熱帯熱マラリア原虫を作製した。この目的のため、P230p遺伝子にCasエンドヌクレアーゼを誘導するガイドRNA配列を組み込んだベクターを作製した。また、pfef1αの5´領域、赤色蛍光蛋白質遺伝子、pbdhfrの3´領域を連結したDNA配列を有するベクターを作製した。これらのベクターを電気穿孔法により熱帯熱マラリア原虫3D7株にトランスフェクションして、ブラストサイジンSとピリメサミンにより薬剤選択した。25日間の薬剤添加の後に赤色蛍光を発する原虫が得られ、その原虫ではP230p遺伝子領域への赤色蛍光蛋白質遺伝子の挿入が確認された。以上より、CRISPR/Casシステムが機能することが確認された。 2) CRISPR/Casシステムを用いてDNA修復遺伝子MSH2-1に変異を導入したミューテーター原虫候補を作製した。当初はMLH1遺伝子に変異を導入する予定であったが、現在のところ成功していない。そこで、MLH1遺伝子と同様にDNA修復に関わるMSH2-1遺伝子に着眼した。1)の実験により決定した条件を適用し、熱帯熱マラリア原虫3D7株のMSH2-1遺伝子にP513Tのアミノ酸置換を導入することに成功した。このミューテーター原虫候補と野生型原虫とのin vitro培養系における増殖を詳細に比較したところ、成長速度には差がなかったが、原虫密度の最大値では野生型原虫よりもミューテーター原虫候補において統計学的に有意な低下が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたMLH1遺伝子への変異導入には現在のところ成功していないが、その代替としてMSH2-1遺伝子に変異を導入した原虫の作製に成功した。今回導入に成功したアミノ酸変異は他の生物においてミューテーター形質を付与することが報告されていることから、作製された原虫がミューテーター形質を有する可能性は十分に高いと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
作製したミューテーター原虫候補の特性を解明する。具体的には、突然変異率を明らかにするためin vitroで長期間培養してゲノムに変異を蓄積させた後に、次世代シーケンサーで蓄積した変異を網羅的に同定する。継代した期間と蓄積変異数から突然変異率を算出する。また、野生型原虫とミューテーター原虫候補を抗マラリア薬を添加した培地で培養し、耐性原虫が得られるかを試験する。また、現在のところ成功していないMLH1遺伝子への変異導入の試みも引き続き行う。
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Causes of Carryover |
本年度は次世代シーケンスの受託解析まで解析を進めることができなかったなどの理由から、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度予算は主に培養実験や分子生物学実験にかかる試薬やプラスチック類等の物品費と、次世代シーケンスの受託解析費用に使用する。また、学会発表および論文投稿にかかる費用として使用する予定である。
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Research Products
(3 results)