2015 Fiscal Year Research-status Report
ビブリオが保有する3つの調節RNA分子の非冗長な発現メカニズムとその役割
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15K19093
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
後藤 和義 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20626593)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 調節RNA / ビブリオ / 翻訳制御 / 転写 |
Outline of Annual Research Achievements |
グラム陰性菌に広く存在するCsr調節システムは調節RNA分子を介した翻訳制御システムであり、多様な生理機能を制御している。ビブリオ属細菌には3種類のCsrファミリー調節RNAが存在し、その発現は3分子ともレギュレーターVarAにより正に制御されることが知られていた。発現の冗長な3つのRNA分子、というこれまでの知見に反して、申請者はVibrio alginoyticusの3つの調節RNAのうち1つがVarAによって正に、うち2つが負に制御されることを見出した。本研究は「非冗長な」3つのRNA分子が正・負真逆の転写調節を受けるメカニズムを解明するとともに、転写後の翻訳制御メカニズムにおける3分子間の機能差まで解析することで、これまで知られていなかったCsrファミリー調節システムの新たなメカニズムを明らかにするものである。 平成27年度の研究計画では、単一のレギュレーターが正の制御と負の制御を同時に行うメカニズムの解明を目指した。まず、CsrB/C/Dそれぞれのプロモーター領域のDNA断片と、リコンビナントVarAタンパク質の結合をゲルシフトアッセイにより検討した。その結果、VarAタンパク質はCsrB/C/Dいずれのプロモーター領域DNAにもほとんど同じ親和性で結合した。このことから、VarAの結合様式の差異が非冗長な発現メカニズムの原因ではないことが示唆された。 次に、CsrB/C/Dの二重破壊株および三重破壊株を作製し、CsrB/C/Dの自体の存在量をノーザンブロット法とqPCRにより確認したところ、破壊株の間で存在量が異なっていた。このことはつまり、CsrB/C/Dの間で相互に存在量を調節するメカニズムがあることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、プロモーター領域と転写調節因子の結合の違いで転写メカニズムを説明しようと企画していた。しかしながら、調節RNAの多重破壊株を用いて実験を行うことで調節RNA同士が互いにその存在量を調節していることが明らかとなった。当初予定していた手法とは異なる手法ではあったが、実験計画を柔軟に変更することで初年度の目標である非冗長メカニズムの端緒をつかむことに成功した。次年度以降はメカニズムの詳細について解析を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
CsrBファミリーに属する3つの調節RNAが互いを互いに調節し合うというこれまでに報告のない現象が観察された。この現象は転写後調節によって説明できるものと推測される。そこで、CsrB/C/DのそれぞれのRNAの安定性を野生株および多重破壊株を用いて解析していく予定である。 同時に、当初の予定通り非冗長なメカニズムが生物学的にどう役立っているのか、フェノタイプの面で解析を進めていく。これには多重破壊株それぞれでのタンパク発現の変化をタンパク質2次元電気泳動を用いて観察し、さらに毒素の発現、遊走能、バイオフィルム形成能といったフェノタイプとの関連を考察していく。
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Causes of Carryover |
ほとんど当初の使用計画どおり使用したが、試薬の購入費を合算したところ端数が生じたため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度以降の予算と併せて試薬の購入費に充てることとする。
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Research Products
(2 results)