2015 Fiscal Year Research-status Report
らい菌が有する未知の成分が惹起する宿主細胞の泡沫化と感染メカニズムの解明
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15K19097
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
谷川 和也 帝京大学, 薬学部, 助教 (10443110)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | らい菌 / triacylglycerol / GPAT3 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は、らい菌感染マクロファージに蓄積される脂質分子種の同定およびその蓄積に寄与する遺伝子について検討した。そのために、ヒト培養マクロファージであるTHP-1細胞を用いらい菌を感染させる実験を行った。これまでの検討により、らい菌を感染させることにより細胞内にtriacylglycerol (TAG)が時間依存的に蓄積されることが分かっていたことから、そのTAG分子種(sn-1, sn-2, sn-3に結合する脂肪酸)についてLC/MS/MS解析を行った。その結果、TAG分子種には様々な変化パターンがあることが明らかになった。m/zが850.71, 904.79はらい菌感染後、48時間で劇的に増加。また、876.8は短時間で時間依存的に増加し、902.75は6時間で増加しその後、頭打ちになっていた。さらに、MS/MS解析により各々のm/zの炭素数、二重結合、グリセロールに結合する脂肪酸も同定することができた。 TAGを合成する細胞内経路はすでに明らかにされており、主に新規合成経路のGlycerol phosphate pathwayと再合成経路のMonoacylglycerol pathwayが存在する。それらに寄与する遺伝子についてマイクロアレイデータから抽出し、変動のあった遺伝子についてさらにqPCRで発現量を比較したところ、Glycerol-3-phosphateに脂肪酸アシルCoAを転移しLysophosphatidic acid(LPA)を合成するGlycerol-3-phosphate acyltransferase(GPAT3)の発現量がらい菌感染時間依存的、MOI依存的に増加することが明らかになった。これらの結果より、らい菌は感染によってGPAT3の発現を誘導し宿主細胞内に特定のTAG分子種を合成し蓄積することが自身の細胞内寄生において重要であると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでの検討により、らい菌感染マクロファージにおいて顕著に蓄積される脂質画分についてはLC/MS データを既に得ていたことから、問題なく当初の計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度までの検討により、らい菌感染によって発現が誘導されるGPAT3、それにともない蓄積される脂質分子種を明らかにしてきた。本年度は、それら脂質分子種がらい菌のマクロファージ内での潜伏・増殖に重要であるか否かについて明らかにする検討を行う。すなわち、らい菌のコントロールとして成分であるpeptidoglycan(PGN)、貪食のコントロールであるlatex beads、宿主マクロファージの異物認識による活性化のコントロールとしてphorbol 12-myristate 13-acetate(PMA)を用いて、らい菌生菌での結果と比較検討し特異的に蓄積されるTAG脂質分子種を明らかにする。また、らい菌感染マクロファージに誘導されるGPAT3について、蓄積されるTAG分子種に必須であるかどうかについて評価するために、GPAT3のsiRNAによって遺伝子ノックダウンし、らい菌感染によって蓄積される脂質、TAG分子種、そしてらい菌のviabilityについて検討をすすめる。
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Causes of Carryover |
予定していた研究が早く進んだため、今年度の予算額を下回ったと考えています。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究はうまくいっているため、研究計画の変更は今のとことありません。平成28年度分と合算して研究用消耗品・旅費等に使用する予定です。
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