2015 Fiscal Year Research-status Report
ウイルスベクターによる高感度HBV複製検出系を用いたcccDNA生成機序の解析
Project/Area Number |
15K19105
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
近藤 小貴 東京大学, 医科学研究所, 助教 (80451871)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | B型肝炎ウイルス / アデノウイルスベクター / cccDNA合成阻害 / ウイルスゲノム複製 |
Outline of Annual Research Achievements |
B型肝炎ウイルス(HBV)の複製ゲノムであるcccDNA (covalently closed circular DNA)は既存の治療法で標的化することができないため、HBVを体内から完全に排除することは未だ困難である。HBVは動物モデルが確立しておらず、培養細胞でのゲノム複製効率は極めて低いため解析が難しいことからcccDNA生成過程の詳細は明らかとなっていない。本研究では、肝細胞への遺伝子導入効率が特に高いアデノウイルス(Ad)ベクターを用いて培養細胞でのゲノム複製を高効率に検出する系の確立を最初の目標とし、本系を用いて、我々が既に同定しているcccDNAの生成に失敗する変異体を含む複数の変異型HBVゲノムを培養細胞へ導入し、複製過程を詳細に解析することでcccDNA生成に必要なゲノム領域や因子を同定し、cccDNA生成阻害薬へ応用することを最終目的として研究を行っている。 複数の変異型HBVゲノム発現プラスミドを用いた予備的な検討から、複製が中間体で止まる変異体、つまりcccDNAの生成に失敗する変異体、及び野生型より高効率に複製する変異体を同定しており、これらはHBVゲノムの一部を欠失したdeletion mutantである。平成27年度は、これらの変異体を基に更に20種類以上の変異型HBVゲノムを作製し、cccDNA生成に必要なHBVゲノム領域の絞り込みを行った。更にそのうちの12種類の変異体についてより定量的な解析を行うためそれぞれの変異体を発現するAdベクターを作製した。新規に作製したAdベクターを用いた解析によってcccDNA生成の前段階であるRC (Relaxed circular) DNAに必要な領域を数塩基にまで絞り込むことに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年度に予定していたcccDNA生成に必要なHBVゲノム領域の同定については20種類以上の変異体を作成し、そのゲノム領域を絞り込むことに成功している。また、複数のAdベクター作成及びそれらを用いた詳細な解析も進んでいるため、現在までの進捗状況はおおむね順調に進展していると考える。 一方で、Adを用いた詳細な解析の結果、ほとんどの変異体がHBVのゲノム複製においてcccDNAの前段階であるRC DNAの生成過程にも影響を与えることから、cccDNAの生成のみを阻害する変異体の同定及びその解析については今までの変異体で得られた結果を元に更なる工夫が必要であると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度における検討から、現在までに作成したHBVの変異体はcccDNAのみならずその複製過程の前段階であるRC DNAの生成にも関与していることが明らかとなった。そこで今後はreal-time PCRを用いてそれぞれの変異体から複製の結果生じたRC DNA及びcccDNAを定量し、その比率を求めることによってcccDNA生成を阻害する変異体の絞り込みを行う。この検討は当初計画しているものではないが、既に全ての材料が揃っているため研究遂行の遅延は生じないと考える。 また、当初の計画通りAdベクターからVA RNA領域を欠失したVA欠失ベクターを用いてsmall RNAのHBVゲノム複製への影響を検討していく。この検討に関しても既に材料が揃っており、当研究室では検討方法も確立していることから研究遂行に問題はないと考えている。
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Research Products
(7 results)