2015 Fiscal Year Research-status Report
非肝臓細胞で複製可能なC型肝炎ウイルスの作製と増殖機構の解析
Project/Area Number |
15K19110
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小野 慎子 大阪大学, 微生物病研究所, 特任研究員(常勤) (30626437)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | C型肝炎ウイルス / 感染症 / 肝外病変 / マイクロRNA |
Outline of Annual Research Achievements |
C型肝炎ウイルス(HCV)の主要標的臓器は肝臓であるが、肝臓以外の組織にも病変を引き起こすことが臨床的に報告され、HCVが非肝臓細胞でも増殖できる可能性が示唆されている。HCVの増殖には肝臓特異的に発現しているmiR-122が重要であるが、最近当研究室では、遺伝子型2aのJFH-1株を用いてmiR-122非依存的に非肝臓組織で増殖可能なHCV変異株を樹立した。そこで、本研究ではHCV変異株の非肝臓細胞での複製・増殖に必須な適応変異を同定し、変異型ウイルスの非肝臓系細胞での増殖機構を明らかにすること、そして非肝臓系細胞からのHCVの感染性粒子産生の可能性を検証することを目的とした。 まず、miR-122欠損細胞を用いて独立した継代により得られた複数のHCV変異株の配列解析を行ったところ、5’末端の非翻訳領域(5’UTR)に存在する、28番目のグアニンからアデニンへの適応変異(G28A)が共通して有意に認められた。miR-122はHCV-RNAの5’UTRに2ヶ所結合し、その翻訳や複製を亢進するが、G28A変異はその結合領域の近傍に存在した。この変異を導入したウイルスは高い翻訳活性を示し、miR-122非依存的に効率良くHCV-RNAの複製複合体を形成できることが明らかとなった。一方、この変異はmiR-122存在下では導入されず、野生型に比べて増えにくい性状を示した。さらに、28番目の塩基が元々アデニンである遺伝子型1bを用いて、miR-122欠損細胞に適応した変異ウイルスを得たところ、5’UTRにおいてmiR-122非依存性を付与できる変異の導入は認められなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
1.HCV変異株における適応変異の同定と野生株との性状比較 次世代シークエンサーを用いてウイルスゲノム上の適応変異を探索したところ、G28A変異が有意に検出された。逆遺伝学的な手法を用いて作製したG28Aウイルスは、miR-122欠損細胞内で野生株に比べ効率良く増殖可能であった。そのメカニズムとしては、変異導入によってHCV-RNAの翻訳活性が上昇することでウイルスの複製複合体形成が促進されることが示唆された。以上から、G28A変異がmiR-122非依存性獲得に必須であることが明らかとなった。 2.遺伝子型1bを用いた、他の遺伝子型における適応変異の検討 遺伝子型2aでは28番目の塩基はグアニンだが、他の遺伝子型では元々アデニンであることが多い。そこで、日本の患者数で7割を占める遺伝子型1bに属するCon1株を用いて、導入される適応変異を解析した。5’UTRおよび構造タンパク質領域はCon1株で、非構造タンパク質領域はJFH-1株由来であるキメラウイルスを作製し、miR-122欠損細胞で継代することで変異ウイルスを得た。すると5’UTRにおいてmiR-122結合領域近傍には変異が認められなかったものの、一塩基変異が認められた。しかし逆遺伝学的手法により、miR-122非依存的な翻訳活性の上昇には関与しないことが明らかになった。遺伝子型2aの場合とは異なり、このキメラウイルスではウイルスRNA全域に複数の適応変異が認められたため、HCVがmiR-122非依存性を獲得するのには5’UTRへの変異導入が必ずしも必要ではないことが明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.臨床検体を用いた検討;広島大学との共同研究で、遺伝子型2aのHCV 患者の血液由来のサンプルが解析可能となっている。血液から血清と末梢血単核球(PBMC)を分離し、血清中のウイルスを肝臓由来、PBMC中のウイルスRNAを非肝臓細胞内というmiR-122非存在環境下で持続的に複製したものとして、G28A変異が導入されているか否かを解析する。また臨床検体からG28A変異が導入されたウイルスRNAが得られた場合、可能であれば肝外病変との関連性を検討する。 2.非肝臓細胞におけるHCV粒子産生の可能性の検討;以前我々は、アポリポタンパク質の両親媒性αヘリックス領域が、HCVの粒子産生に重要であることを報告した(Fukuhara and Wada et al., 2014, PLoS Pathog.)。そこで、肝臓以外の組織で発現が認められる他の分泌タンパク質が粒子産生に寄与しうるか否かを検討する。 3.他のマイクロRNAの関与の検討;肝臓細胞で発現しているマイクロRNAの7割はmiR-122であるが、それ以外に他のマイクロRNAも発現している。配列の異なる遺伝子型1bでは5’UTRに変異が導入されなかったため、miR-122非存在下での遺伝子型2aにおけるG28A変異の導入およびウイルス増殖効率の上昇に、miR-122以外のマイクロRNAが関わっている可能性がある。そこで、HCV-RNAの翻訳・複製を亢進しうる他のマイクロRNAを探索する。 また、得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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[Presentation] Characterization of miR-122-independent propagation of HCV2015
Author(s)
Chikako Ono, Takasuke Fukuhara, Satomi Yamamoto, Hiroyuki Mori, Toru Okamoto, Su Su Hmwe, Takaji Wakita, Kazuhiko Koike and Yoshiharu Matsuura
Organizer
22nd International symposium on Hepatitis C and related viruses
Place of Presentation
フランス、ストラスブール
Year and Date
2015-10-09 – 2015-10-13
Int'l Joint Research