2015 Fiscal Year Research-status Report
EBウイルス陽性上皮細胞を腫瘍化に導くDNA編集酵素の研究
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15K19113
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
金廣 優一 島根大学, 医学部, 助教 (60609197)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | mitchondria DNA / APOBEC / EBV / Gastric carcinoma |
Outline of Annual Research Achievements |
Epstein-Barrウイルス(EBV)は、腫瘍を発生させるウイルスであり、胃がんの一部や上咽頭がん等の形成に関与する。しかし、EBV陽性上皮細胞性腫瘍の発がん分子機構は十分に解明されていない。以前に、胃がん上皮細胞にEBVを感染させるとDNA編集酵素APOBECが発現誘導される実験結果を得ている。従って、EBV感染が遺伝子変異酵素を発現誘導することでゲノム変異をもたらし、細胞を腫瘍化させる仮説をもとに研究を遂行した。APOBECはシチジン(C)をウリジン(U)に変換することでC-to-T変異を誘導することから、EBV感染胃がん上皮細胞におけるゲノムへのC-to-T変異について解析を行ったところ、ミトコンドリアDNAへのAPOBEC依存的な変異導入が蓄積されていることを突き止めた。これらの変異導入はAPOBECを外来的に導入した場合においても同様に検出された。共焦点顕微鏡による観察により、これらAPOBECは細胞内でミトコンドリアと一部共局在していることが確認された。従って、上皮細胞において、EBV感染はミトコンドリアDNAへのAPOBEC依存的な変異を導入することでミトコンドリア機能を低下させ、細胞を腫瘍化へ導く可能性が考えられた。EBV感染がAPOBECを通して宿主の遺伝子変異を誘発することが明らかになれば、APOBECをターゲットとしたEBV感染による上皮細胞性腫瘍の予防法が開発できる。さらに、APOBEC活性の上昇が、多くのウイルス感染で共通に認められる現象であれば、より多くのがんの発生に、ウイルス感染が関わっている可能性を示すことができる。本研究は、発がんリスクの予測に役立ち、ウイルス発がんの予防治療薬の開発につながる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、EBV陽性上皮細胞性腫瘍の発がんへのDNA編集酵素APOBECの関与について明らかにすることである。EBV感染胃がん上皮細胞におけるゲノムへのC-to-T変異について解析を行ったところ、予想外なことに、ミトコンドリアDNAへのAPOBEC依存的な変異導入が蓄積されていることが明らかとなった。がん細胞では、ミトコンドリア機能の高頻度な低下が認められることから、EBV感染で誘導されたAPOBECは、ミトコンドリアDNAに変異を導入することでミトコンドリアの機能低下をもたらし、腫瘍化へ導く可能性が考えられる。従って、EBV感染においてAPOBEC発現と新たに関与が考えらえるミトコンドリアの機能に焦点を当て、研究を遂行する。
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Strategy for Future Research Activity |
EBVの感染によりDNA編集酵素APOBECが発現誘導された結果をもとに、APOBEC発現誘導経路と因子について阻害剤を用いて解析する。EBV由来タンパクについては、感染後のEBV遺伝子発現の定量的PCRによって発現上昇が確認されたものについて、一過性発現によるAPOBECの発現誘導を確認する。EBV感染によりミトコンドリアDNAへAPOBEC依存的なC-to-T変異が導入されている実験結果をもとに、APOBECの発現によるミトコンドリアの活性変化について詳細に検討する。また、CRISPR/Cas9による遺伝子ノックアウト法を用いて、APOBECを欠損させた場合のミトコンドリアDNAへの変異頻度の影響およびEBVの感染効率について解析する。ミトコンドリアとAPOBECが一部共局在していた結果をもとに、APOBECを外来性に発現させたのちにミトコンドリア画分を抽出し、APOBECと相互作用するミトコンドリア由来因子の同定を行う。
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Causes of Carryover |
消耗品の大量購入による値引きや試薬販売企業のキャンペーン期間における購入により、通常価格よりも安価に購入したため
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
物品費については、通常当研究室使用するものについて適切に購入する。旅費については、国内学会と国際学会における学術会議での研究成果発表と情報収集を予定している。人件費・謝金については、研究期間内の科学雑誌への投稿のための英文校閲を予定している。その他については、次世代シーケンサー、LC-MS/MSの解析を外部業者へ依頼予定である。
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Research Products
(3 results)