2015 Fiscal Year Research-status Report
日本脳炎ウイルスゲノムの環状化がウイルス複製に及ぼす影響
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15K19115
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
石川 知弘 獨協医科大学, 医学部, 助教 (40609327)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本脳炎ウイルス / ゲノム環状化 / 相補性 / RNA複製 / ウイルスタンパク翻訳 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本脳炎ウイルス(JEV)ゲノム両端には4組の相補配列(CS)が見出される。他のフラビウイルスでは3組のCSが確認されており、CSを介してゲノムが環状化し、ウイルス複製に重要であることが報告されている。JEV複製機構におけるCSの役割を検討するため、本年度はルシフェラーゼ発現JEVレプリコンのそれぞれのCS領域に相補性を喪失する変異体と相補性を維持する変異体を構築した。 野生型および変異体RNAを哺乳類細胞と蚊細胞に導入して細胞内でのタンパク翻訳能およびRNA複製能について検証したところ、JEVゲノム中の4組全てのCS領域がウイルス複製に関与していることが明らかになった。しかしCS領域により、タンパク翻訳能の低下・欠損が認められるもの、RNA複製能の低下・欠損が認められるものが観察された。さらにこれらのウイルス複製機構への関与は相補性依存性の個所と配列依存性の個所が見出された。中でもJEVゲノムに特異的に認められる4組目のCS領域がタンパク翻訳能の低下・欠損を来したことはJEVの複製機構を理解するうえで重要知見と考えられる。また、CSの機能は哺乳類細胞と蚊細胞において保存されていることが示された。 次に実際にこれらのCS領域が結合し、ゲノム環状化に寄与しているかどうかをゲノム両端RNAのみをそれぞれ合成し、ゲルシフトアッセイにより確認した。現時点では4組全ての解析は終えていないが、検討したCSでは野生型同士、変異型同士のRNAを混合すると2本差RNAの形成が起こりバンドの上方シフトが観察された。これらの結果より、JEVゲノムはCSを介して環状化し、ゲノム環状化がタンパク翻訳およびRNA複製に重要な役割を果たしていることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究計画通りルシフェラーゼ発現日本脳炎ウイルスレプリコン中の4組の相補配列の種々の変異体を作製し、解析を行った。また、ゲルシフトアッセイ用のRNA発現ベクターについても作製した。本来は4組全ての組み合わせについてゲルシフトアッセイを終える計画であったが、完了できなかった。non-RIゲルシフトアッセイを行うにあたり、条件設定に想定より時間を要したが、最終的には検出可能な条件を設定することができた。従って、本研究計画はおおむね順調と言える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はゲルシフトアッセイにより、RNAの結合性を確認しゲノム環状化への寄与を明らかにすると同時に、必要に応じて複数の相補配列領域に同時に変異を導入し、ウイルス複製に及ぼす影響を解析する。またこれらの相補配列領域が抗ウイルス薬の標的となり得るかどうかについても検証する予定である。
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Causes of Carryover |
Non-RIゲルシフトアッセイの実施を計画していたが、使用試薬・器具の選定および条件設定に時間を要し当初の研究計画分すべての検討を本年度内に行えなかったため、次年度使用額を生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
当初の研究計画である複数の相補配列への同時変異導入を行い、ウイルス複製への影響を確認するとともに、相補配列の抗ウイルス薬開発の標的としての評価を行う。また前年度検討完了できなかった、Non-RIゲルシフトアッセイを用いたゲノム環状化の検証を行う予定である。
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