2015 Fiscal Year Research-status Report
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15K19118
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Research Institution | National Institute of Infectious Diseases |
Principal Investigator |
塩田 智之 国立感染症研究所, ウイルス第二部, リサーチレジデント (80616144)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | E型肝炎ウイルス(HEV) / ウイルス様中空粒子(VLP) / レセプター(ウイルス受容体) / HEV感受・非感受性細胞 / Fc融合タンパク質 / 免疫沈降法 / 結合・感染阻害 / CRISPR/Cas9 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、食品媒介性の感染が増加する一方で有効な対策法が存在しないE型肝炎ウイルス(HEV)について、HEV感受・非感受性細胞の解析からレセプター(ウイルス受容体)を同定し、効果的なワクチンや治療薬開発の基盤確立を目指す。 これまで、感受性細胞cDNAライブラリを用いた機能性解析と網羅的遺伝子発現解析から得られたレセプター候補について下記を実施した。 1)レセプター候補のHEV直接結合能の検証。候補遺伝子をFc融合タンパク質発現ベクターに組込み、発現、作製したFc融合レセプター候補と高精度な調製が可能なウイルス様中空粒子(VLP)を用いた免疫沈降法により、直接結合を確認することに成功した。 2)抗レセプター候補抗体のHEV-レセプター候補間結合阻害能の検証。市販の抗レセプター候補ポリクローナル抗体を用いて、VLPとFc融合レセプター候補間の結合阻害能を確認した。当該抗体は合成ペプチドを抗原として作出されており、販売元から一部配列情報を得て大まかなエピトープ部位が判明している。 3)CRISPR/Cas9による感受性細胞ゲノム編集による候補因子削除時の検証。候補因子遺伝子に対する異なる位置3か所に対してガイドRNAとCas9タンパク質をコードする哺乳類細胞発現ベクターを作製し、感受性細胞株の候補因子をノックアウトした所、HEV感受性が大きく抑制された。 4)レセプター候補遺伝子搭載哺乳類細胞発現ベクターによる非感受性細胞のレセプター候補安定発現株の感受性評価。哺乳類細胞において候補遺伝子を安定発現するベクターにより樹立したレセプター候補安定発現非感受性細胞株において、バルクの樹立細胞を用いた感受性復帰試験に複数の矛盾点が生じたため、限界希釈によるサブクローンでの感受性復帰試験を行った。その結果、安定したレセプター候補発現量を示すサブクローンにおいて、感受性の復帰を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1)レセプター候補のHEV直接結合能の検証。候補遺伝子組込みFc融合タンパク質発現ベクターを構築した。本ベクターの哺乳類細胞発現により作製したFc融合レセプター候補とVLPの直接結合が免疫沈降法により成功しており、おおむね順調に進展している。 2)抗レセプター候補抗体のHEV-レセプター候補間結合阻害能の検証。VLPとFc融合レセプター候補間の結合は、市販の抗レセプター候補ポリクローナル抗体によって阻害されることを確認した。また、当該抗体は合成ペプチドを抗原として作出されており、販売元から部分的なペプチド配列情報を得て大まかなエピトープ部位が判明していることから、おおむね順調に進展している。 3)CRISPR/Cas9による感受性細胞ゲノム編集による候補因子削除時の検証。候補因子遺伝子に対するガイドRNAとCas9タンパク質をコードする哺乳類細胞発現用プラスミドベクターを作製し、感受性細胞株の候補因子をノックアウトした所、HEV感受性が大きく抑制されたことから、当初の計画以上に進展している。 4)レセプター候補遺伝子搭載哺乳類細胞発現ベクターによる非感受性細胞のレセプター候補安定発現株の感受性評価。哺乳類細胞において候補遺伝子を安定発現するベクターにより樹立したレセプター候補安定発現非感受性細胞サブクローンにて感受性の復帰を確認できたことから、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)レセプター候補のHEV直接結合能の検証。レセプター候補とVLPとの直接結合能は確認されたため、今後は、感染性を持つHEVとの直接結合の確認を行う。 2)抗レセプター候補抗体のHEV-レセプター候補間結合阻害能の検証。既に成功しているVLPを用いた阻害実験より、今後は、同一条件下でポリクローナル抗体の代わりに市販のエピトープ同定済モノクローナル抗体へと展開して阻害抗体をスクリーニングし、結合部位を絞込む。また、感染阻害実験を行って治療薬候補モノクローナル抗体を得る。 3)CRISPR/Cas9による感受性細胞ゲノム編集による候補因子削除時の検証。候補因子ノックアウト実験による感受性抑制の詳細な検証の為、今後は、候補因子ノックアウト細胞に対して候補因子全長および細胞内ドメイン搭載と空のベクターを用いた感受性試験を行う。 4)レセプター候補遺伝子搭載哺乳類細胞発現ベクターによる非感受性細胞のレセプター候補安定発現株の感受性評価。非感受性細胞への候補因子発現による感受性復帰を詳細に検証するため、今後は、非感受性細胞に対して候補因子の細胞内ドメイン搭載と空のベクターを用いた感受性試験を行う。
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Causes of Carryover |
年度末納品等にかかる支払いが平成28年4月1日以降となったため、 当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。 平成27年度分についてはほぼ使用済みである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
上記のとおり。
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Research Products
(1 results)