2015 Fiscal Year Research-status Report
Meninによるエネルギー代謝調節を介した免疫老化制御機構の解明
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15K19133
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
鈴木 淳平 愛媛大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教(特定教員) (20734239)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 老化 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
加齢に伴う免疫システムの老化は、外来抗原に対する応答の減弱や炎症性サイトカイン産生の増加を誘導し、高齢者における易感染性、慢性炎症性疾患や発がんの増加の一因となっている。しかしながら、免疫老化の本質であるT細胞老化の分子機構解明は未だ明らかとなっていない。申請者らはこれまでに、腫瘍抑制因子Meninを欠損したCD8 T細胞では、抗原刺激後の早期にT細胞老化の表現系(細胞の肥大化、SA β-ガラクトシダーゼ活性の上昇、抑制性受容体の発現、炎症性サイトカイン発現)を示すこと、細胞内エネルギー代謝(グルタミン代謝、嫌気的解糖)が野生型に比べ過剰に亢進していることを見出してきた。本研究は、MeninによるCD8 T細胞エネルギー代謝機構の解明研究を行うことで、T細胞老化の制御機構を代謝リプログラミングの観点から明らかにすることを目的とする。本年度はMeninのグルタミン代謝、解糖系における役割を解析するとともに、細胞内エネルギー代謝調節によるT細胞老化制御について検討した。Meninにより発現制御を受ける代謝関連分子を解析した結果、候補代謝関連遺伝子を3つ同定した。このことから、Meninは細胞内エネルギー代謝を制御する可能性が考えられた。また、Menin欠損活性化CD8 T細胞でみられる過剰なグルタミン代謝やグルコース代謝の亢進を調節することで、細胞老化の形質が部分的に回復することを見出した。これらの結果は、Meninが細胞内エネルギー代謝の調節を介してCD8 T細胞老化を制御する可能性を示唆する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、MeninによるCD8 T細胞エネルギー代謝機構の解明研究を行うことで、T細胞老化の制御機構を代謝リプログラミングの観点から明らかにすることを目的とする。具体的には以下の3項目を計画し解析を進めている。1:Meninによるグルタミン代謝、グルコース代謝調節機構の解明、2:細胞内エネルギー代謝調節によるT細胞老化制御、3:T細胞エネルギー代謝調節による免疫制御法の確立。本年度は項目1、2を中心に解析を行った。まず、RNA-シーケンスとDNAマイクロアレイ解析結果から、Meninにより発現制御される候補代謝関連遺伝子を3つ同定した。この結果は、項目1を遂行する足がかりとなる。また、項目2に関して、阻害剤を用いてグルタミン代謝や解糖系を調節することでMenin欠損活性化CD8 T細胞で見られるT細胞老化の形質が部分的に回復したことから、細胞内エネルギー代謝状態を調節することでT細胞老化を制御できる新たな知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
Meninによる代謝関連分子の発現制御機構を検討するためChIP-シーケンスと新規Menin結合分子の探索を計画している。また、項目1で同定した代謝関連分子のT細胞老化における役割を解析するため、代謝関連分子/Meninダブル欠損マウスを作製している。項目3については、T 細胞の代謝の調節による、免疫機能制御制御の可能性について、マウスがん転移モデルと感染症モデルを用いて検討を行う。また、加齢に伴う発がん増加や易感染性に対する T 細胞代謝調節の作用については、Menin欠損マウスをモデルとして用いる。これらの解析を行うことで、T細胞代謝と老化におけるMeninの役割を明らかにする。
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Research Products
(3 results)