2015 Fiscal Year Research-status Report
CD28シグナルによる末梢由来制御性T細胞の生体内維持機構の解明
Project/Area Number |
15K19137
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
若松 英 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 助教 (40632617)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | CD28 / 制御性T細胞 / シグナル |
Outline of Annual Research Achievements |
制御性T細胞(Treg)は生体内で胸腺由来Treg(tTreg)と末梢由来Treg(pTreg)に分類される。tTreg恒常性維持におけるCD28の役割に関しては多くの知見が報告されている。CD28欠損マウス末梢リンパ組織において、tTregと同様にpTregも減少しているにも関わらず、pTregの恒常性におけるCD28の役割はほとんど研究されていない。平成27年度はCD28がpTregの細胞死の抑制、増殖能の亢進に寄与しているかを検討した。細胞死の指標として開裂型カスパーゼ3に注目して、CD28欠損pTregの解析を行った結果、CD28欠損と野生型pTregに顕著な違いは認められなかった。生体内でのpTreg細胞死へのCD28の役割を解析するために、野生型マウスにpTregを移入し、一週間後に移入した細胞の割合を解析した。開裂型カスパーゼ3の結果と一致して、CD28欠損pTregは野生型とほぼ同程度検出された。これらの結果から、CD28はpTregの細胞死抑制に寄与していないことが明らかとなった。次に増殖への影響に関して、細胞周期エントリーの指標であるki67発現、DNA合成の指標であるBrdUの取り込みを解析した。その結果、野生型とCD28欠損pTregで顕著な違いが認められなかった。生体内での増殖にCD28が寄与しているかを検討するために、Tregが欠損しているCD28欠損マウスにpTregを移入し、二週間後に解析を行った。ki67発現やBrdU取り込みの結果に反して、CD28欠損pTregはほとんど検出されなかった。CellTrace Violetを用いて細胞分裂を解析した結果、CD28欠損pTregはほとんど分裂していなかった。これらの結果から、CD28はpTregの増殖を促進することで生体内でのpTreg恒常性維持に寄与している可能性が示唆される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
平成27年度使用予定であったCD28flox/floxマウス、およびFoxp3-Cre-YFPマウスの搬入、および交配に時間がかかってしまったため、これらのマウスを用いた実験が遅れている。また、平成28年度に行うRNAシークエンス解析のためのサンプリングに時間を要している。その他の実験に関しては概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度予定していたCD28flox/flox/Foxp3Creマウスを用いて、CD28欠損細胞で認められる増殖能の低下が分化の段階の異常ではなく、分化後にCD28が欠失することで起こっているかを確認する。また、RNAシークエンス解析を行い、pTregにおけるCD28を介した増殖メカニズムの詳細な解析を行っていく。CD28細胞内領域にはPI3K経路の起点となるYMNMモチーフとLck経路の起点となるPYAPモチーフが存在し、エフェクターT細胞の増殖に重要な役割を果たしていることが知られている。pTregの増殖にこれらのシグナルモチーフが寄与しているかをノックインマウスを用いて解析する。
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Causes of Carryover |
平成27年度に使用予定であったマウスの搬入及び繁殖が予定よりも遅れたため、予定していた実験を行えなかった。また、RNAシークエンス解析のサンプル作製に時間がかかり、すべてのサンプルを解析できなかった。さらに、これらの遅れにより予定していた学会での発表ができず予定していた旅費を使用しなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は予定していたマウスが使用予定数まで増えたため、平成28年度の前半で予定していた解析を行う。そのため、当初の予定とは異なり、マウスの維持費、解析費がかかる。また、平成27年度予定のRNAシークエンス解析を全て行うことができなかったため、当初の予定と異なり、平成28年度分でRNAシークエンス解析の費用がかかる。これらの費用に関しては平成27年度からの繰越分を充てる予定である。
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