2015 Fiscal Year Research-status Report
膜型IgEシグナルによるB細胞の運命制御機構の解明
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15K19138
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
羽生田 圭 東京理科大学, 研究推進機構生命医科学研究所, 助教 (40734918)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | IgE / 免疫記憶 / プラズマ細胞 / 胚中心 |
Outline of Annual Research Achievements |
過剰なIgEの産生はアレルギー疾患の原因としてよく知られている。通常、IgE陽性B細胞は短命であり、長期に生存できる記憶B細胞や長期生存プラズマ細胞には分化せず、過剰なIgE産生が抑えられている。しかしながら、記憶B細胞や長期生存プラズマ細胞への分化がどのようにして抑制されているのか、その分子メカニズムは全く不明であった。私たちは、自発的な膜型IgEシグナルがIgE陽性B細胞の短命化を誘導することをすでに見出している。この知見をもとに、本研究ではIgE陽性B細胞特有の分化・維持・体内動態の制御機構の解明、さらには、その結果に基づいてアレルギー発症機序の解明を目指して研究を進め、以下の結果を得た。 1. 膜型IgEが抗原非依存的に細胞死を誘導することを新たに見出した。さらにこの細胞死誘導には、BLNKを介したJNK及びp38 MAPKの活性化が重要であることを同定した。BLNK欠損B細胞では、膜型IgEによる細胞死誘導がほとんど認められなかった。マウスを免疫することにより誘導されるIgE陽性胚中心B細胞においても、BLNK依存的な細胞死の亢進が見られた。さらに、膜型IgEによる細胞死誘導にはCD19を介したシグナル経路は関与しないことも明らかとなった。 2. 膜型IgEの細胞外ドメインの内、CH1-4ドメインがSyk-BLNK経路の活性化を介した細胞死の誘導に必須であることを見出した。また、膜直上の小さな領域であるExtracellular membrane proximal domain (EMPD)がCD19との恒常的な会合に必須であり、自発的なプラズマ細胞分化に必要であることを見出した。 3. 培養B細胞にハプテンNP特異的膜型IgG1と膜型IgEを発現させ、それぞれを精製してSDS-PAGEを用いて分離したのち比較解析した。その結果、膜型IgEのみに会合するタンパク質が複数存在することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従って、膜型IgEとIgG1のドメイン置換体を複数作成し、膜型IgEの自発的シグナル誘導の責任領域同定を試みた。その結果、膜型IgEの細胞外ドメインであるCH1-4と膜直上のEMPDが、Syk-BLNK-JNK/p38経路の活性化を介した細胞死と、CD19-PI3K-Aktを介した自発的なプラズマ細胞分化の誘導にそれぞれ必須であることを見出すことができた。しかしながら、自発的シグナル形成メカニズムの解明には至っておらず、現在その解明を目指して解析を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
膜型IgEによる自発的シグナル形成メカニズムを明らかにするために、膜型IgEのCH1-4に結合し、シグナル誘導のトリガーとなる分子を探索する。培養B細胞にNP特異的な膜型IgG1およびCH1-4がIgE由来のIgG1変異体をそれぞれ発現させ、その細胞溶解物をNP-ビーズを用いて免疫沈降する。沈降物のSDS-PAGEと質量分析法によって、膜型IgG1には結合せずIgG1変異体にのみ結合するタンパク質を同定する。同定した分子を培養B細胞においてノックダウンし、IgE陽性B細胞の長期生存能を解析して機能的な膜型IgEリガンドを同定する。
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Causes of Carryover |
膜型IgEによる自発的シグナル形成の責任領域を同定することができたが、自発的シグナル形成の分子メカニズムを明らかにするまでには至っていない。次年度では、その全貌を解明すべく当初の計画に従って研究を進める。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
研究を遂行するために必要な、抗体・サイトカイン等の試薬類、マウス、プラスチック器具類を購入する。さらに、質量分析(外部専門業者に委託する)を重点的に行い、膜型IgEのCH1-4に結合する分子を同定する。
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Research Products
(5 results)