2015 Fiscal Year Research-status Report
T細胞特異的CNOT3欠損マウスにおけるT細胞分化・機能異常と自己免疫疾患発症
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15K19140
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Research Institution | Okinawa Institute of Science and Technology Graduate University |
Principal Investigator |
呉羽 拓 沖縄科学技術大学院大学, cell signal unit, 研究員 (50637684)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | CCR4-NOT / deadenylation / positive selection |
Outline of Annual Research Achievements |
mRNAのpoly A配列を分解するデアデニレーションは、適切なmRNA発現やタンパク合成に関与し、動物の発生や分化制御に重要な役割を果たす。CCR4-NOT複合体は酵母から哺乳類まで高度に保存されたmRNA分解系酵素複合体でありCNOTタンパク(CNOT1, CNOT2, CNOT3, CNOT6 or CNOT6L, CNOT7 or CNOT8, CNOT9, CNOT10)により構成されている。この複合体は、mRNAのpoly A配列をデアデニル化するが、デアデニル化されたRNAはエクソソームにより分解を受けると考えられている。今回、申請者はT細胞特異的に発現するLck-Cre、およびCd4-Creマウスを用いて、CNOT3遺伝子をT細胞特異的に欠損するマウスを作製した(T-CNOT3⊿マウス)。T-CNOT3⊿マウスにおいては、成熟T細胞への分化が阻害され、それはポジティブセレクションにおける異常によるものであることが明らかとなった。さらに、CCR4-NOT複合体はMAP3Kファミリーの一つASK1のタンパク発現を制御することで、TCR刺激による異常なJNKおよびp38の活性化を抑制していることが分かった。T-CNOT3⊿マウス由来の胸腺細胞はTCR刺激非存在下では細胞死を起こさないが、TCR刺激存在下では細胞死が誘導された。これらより、CCR4-NOT複合体はASK1の発現制御を介しTCR刺激による細胞死シグナルを抑制していることが明らかとなった。今回の研究において、我々はCCR4-NOT複合体によるpoly(A)鎖の長さ調節がT細胞のポジティブセレクションに関与するという新規メカニズムの一端を解明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在行っている研究は既に論文投稿中であり、CCR4-NOT複合体がT細胞において重要な役割を持つということを明らかとした。これは、世界で初めての報告であり未だpoly(A)鎖の長さが標的遺伝子の発現制御に重要であり、かつ生理学的意義を持つということも報告されていない。2014年よりプロジェクトを開始し、現状論文投稿まで至っていることからもおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
CCR4-NOT複合体によるpoly(A)鎖長の制御に関してはまだ不明な点が多い。各臓器においても様々な特異的な標的遺伝子が存在することから、T細胞における標的遺伝子を同定することが重要である。また、既にあるCCR4-NOT複合体のサブユニットの一つが自己免疫疾患との関連性を示唆するデータを見出していることから、疾患治療につながる研究を目指す。今後はT細胞における自己免疫疾患に関与する遺伝子群の発現制御がCCR4-NOT複合体により制御されるのかどうかを探索する。
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Causes of Carryover |
当初行う予定であった実験を実験マウスが間に合わなかったため、予定を変更した。また、購入予定だった消耗品が納期に間に合わないこともあり、次年度へと繰り越した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
延期した実験に予定通り使用する。
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