2015 Fiscal Year Research-status Report
「糖尿病」と「認知症」および「ソーシャルキャピタル(SC)」との関連性
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15K19146
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
末松 三奈 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 寄附講座助教 (10728744)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ソーシャルキャピタル / 糖尿病 / 認知症 / MMSE / 食事療法主観的達成度 / 運動療法主観的達成度 / セルフエフィカシー |
Outline of Annual Research Achievements |
認知症を有する糖尿病患者数は激増し、医療だけでなく地域社会を含めた包括的な取り組みが必要とされている。本研究の目的は、「糖尿病」と「認知症」、そして患者の健康行動を規定する社会的決定要因の一つとして注目されている「ソーシャルキャピタル(SC)」との関連性を明らかにすることである。平成27年度は、糖尿病のコントロールに関連するSCに注目し調査を行った。研究開始に先立ち、名古屋大学医学部生命倫理審査委員会の承認を得た。(承認番号:2015-0184) 1各文書書類作成とシステム構築 「研究趣旨説明書」、「同意書」、「糖尿病患者測定項目票」、「MMSE(Mini Mental State Examination)」、「SC測定票」の5つを用意し、患者と対面し直接説明しデータを入力できるように、File Maker 13やSPSSを利用した解析まで行うシステム構築した。「糖尿病患者測定項目」は、(1)基本的項目として年齢、性別、身長、体重、腹囲、喫煙歴、飲酒歴、血糖値、HbA1c、罹病期間、合併症の有無と進行状況、重症低血糖の有無、治療方法、治療自己中断の有無、SMBGの有無、糖尿病療養指導士などによる療養指導を受けた経験の有無、外食頻度、運動習慣、自己管理の主観的達成度、(2)社会的項目として、病院からの距離、平均年収、職種、教育レベル、婚姻状態、同居人の有無を調査した。MMSEは既存の測定票を使用した。「SC測定票」は、信頼、ソーシャルサポート、互酬性、ソーシャルネットワークという指標を過去の文献に基づき新たに用意した質問票を使用した。 2調査の実施 愛知県内の地域病院で糖尿病通院治療中の2型糖尿病患者を対象とし、生命倫理委員会承認後に調査を開始した。システム構築した専用のiPadを持参し、データ入力までをリアルタイムに行った。目標人数100人中、65人まで調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成28年度は、前年度で目標人数の100人を達成しなかったため、約 6 ヶ月間の追加調査を行う予定である。研究計画の予定通りに目標人数達成後、3ヶ月間で蓄積されたデータ整理と解析を行い、3ヶ月間は学会発表と論文作成期間とする。 1データ解析:得られた患者のデータは、FileMaker 13を用いたシステムで管理中であり、iPadとiMacの双方で中間結果を確認できるように随時リンクさせている。データ収集は、対面式アンケートと患者の診療カルテ参照の両方より行っているが、個人情報に配慮し個人が特定できないように、氏名を匿名化した状態で番号管理すしている。ただし、追加調査の必要性がある可能性があるため連結可能匿名化として、回収したデータは、パスワードを付したfileで管理し、他者に情報漏洩がされないように留意している。 データの解析は、iMacにて統計ソフトSPSSを用いて多変量解析を行う予定である。認知症を有する糖尿病患者の療養生活を支援できる地域社会作りを考える為に、どのSCの指標が最も認知症や糖尿病の測定項目と関連するかを解析する。また、認知症、糖尿病のそれぞれ独立した増悪因子あるいは改善因子を抽出することで、認知症予防、糖尿病予防に寄与する因子についても検討する。糖尿病患者の認知症予防に対して、また認知症を有する糖尿病患者の療養指導と地域社会システム作りに対しても関連の深い因子に模索する。 2学会発表および論文作成:認知症、SC の各指標、血糖コントロールなどを中心とした糖尿病療養上の測定項目との関連性について明らかにし、国内外の公衆衛生学会または糖尿病学会で発表および同分野への論文投稿を通して報告する予定である。 以上より、おおむね計画通りに進展しているが、認知症を軽度有する患者へのアンケート調査の信頼性については検討を要する。
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Strategy for Future Research Activity |
1研究対象・認知症について:本研究の目的として、認知症を有する糖尿病患者の療養生活を支援できる地域社会作りを考える為に、「どのSCの指標が最も認知症の測定項目と関連するかを解析する。」すなわち「認知症の独立した増悪因子あるいは改善因子を抽出することで、認知症予防に寄与する因子についても検討し、地域社会システム作りに対しても関連の深い因子に模索する」としているが、実際に調査を行っていると不具合がある。 認知症と明らかに診断されている糖尿病患者を対象にアンケートを行っても、解答の信頼性が低いため除外しているが、認知症と診断されていない糖尿病患者65名を対象にMMSEを調査しても、ほとんどの患者がMMSE25以上であるため、結果を導きだすような解析に用いることは困難が予想される。場合によっては、糖尿病コントロールとソーシャルキャピタルに焦点を絞って解析を行うことも検討する。その場合には、研究タイトルの変更も検討する。 2質問票について:ソーシャルキャピタル質問票について、過去の文献より新たに作成した質問票を使用しているため、信頼性と妥当性を検証する必要がある。また、現在65名に調査を施行した結果、全ての対象者が同じ結果を答えた質問項目があり、データ解析を行う上で考慮が必要である。多変量解析を行う上で目標症例が100例と少ないため、ソーシャルキャピタル質問票の質問項目を因子分析を追加して解析を行うことも検討する。 3データ解析について:本研究は横断調査であるため、糖尿病コントロールがHbA1cという指標だけでは十分に反映されない可能性がある。したがって、その他の指標である合併症の有無、薬物療法の有無、食事療法主観的達成度、運動療法主観的達成度なども反映させた糖尿病コントロール指標として解析を実施する。
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