2016 Fiscal Year Research-status Report
病巣の肺胞構造制御に基づく難治性呼吸器疾患治療DDSの創出
Project/Area Number |
15K19165
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Research Institution | Hokkaido Pharmaceutical University School of Pharmacy |
Principal Investigator |
戸上 紘平 北海道薬科大学, 薬学部, 講師 (20582357)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 肺線維症 / 肺がん / 肺投与型DDS / イメージング / 組織透明化 |
Outline of Annual Research Achievements |
呼吸器疾患の進行に伴って起こる肺胞構造の破壊により、肺投与した薬物の肺内滞留性が著しく低下するという昨年度の知見を基に、今年度は肺投与型微粒子製剤の構築研究に着手した。初めに、当研究室で開発した高い肺内滞留性を有する、肺投与型PEG修飾リポソーム(粒子径130 nm)を用いて検討した。ブレオマイシン誘発性肺線維症モデルマウス及びラットにおいて、肺内滞留性は改善されたものの、肺内における分布に著しい偏りが生じている可能性が、蛍光ズーム顕微鏡やin vivo imaging装置を用いたex vivo imagingの結果より示された。そこで、肺胞内の薬物及びDDSの分布をより詳細に評価することを目的として、より微細なレベルでの肺内薬物イメージング法の確立に着手した。その結果、組織透明化技法を応用することで、種々の肺細胞及び線維組織といった解像度レベルでの薬物分布評価が可能となった。この方法を用いて、肺線維症モデルマウスにTexasRed-dextran水溶液を肺投与したところ、線維化過程において肺内に生じた空胞部位などの一部に局在し、肺内全体に均一には分布しないことが示された。以上の結果に基づき、現在は肺投与型DDSに用いる微粒子の至適粒子径などの見直しと、肺内で製剤が一部に局在してしまっても有効な治療を可能とするために、病巣に留まりつつその周辺に抗腫瘍薬や抗線維化薬を徐々に放出する機能を搭載した、放出制御型製剤の構想を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
呼吸器疾患発症時における肺投与型DDSの肺内分布の偏りが、当初想定していたものよりも遙かに顕著であり、その評価法と対応策を立案するのに時間を要したため。昨年度の段階では、肺投与型DDSに用いる微粒子の粒子径調整やPEG修飾による受動的ターゲッティングや、病巣の細胞や組織に選択的に結合する抗体や特異的なリガンドを用いた能動的ターゲッティングにより、この問題を解決する予定であったが、これらの対応策だけでは十分な肺内動態改善の達成が困難であると判断したため。
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Strategy for Future Research Activity |
肺投与型DDSの受動的、能動的ターゲッティングによる肺内動態の改善を目指す方向性はそのままに、肺内における薬物の放出制御能の付与も必要になったと考えている。そこで平成29年度は、現在完成しているPEG修飾リポソームを用いて、当初の計画通りに各種病態における治療効果の判定を始めていき、それと同時に放出制御能を搭載した新たな微粒子製剤の構築を目指す。
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Causes of Carryover |
平成28年度の研究成果として、そもそも呼吸器疾患発症時においては、肺投与液の分布が極端に偏ることが示された。この問題を解決するために、肺内薬物分布の詳細な評価法を確立するために時間を要し、製剤構築自体は若干の遅れを生じている。この次年度使用額は、その製剤構築のための材料費の予定であった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成29年度においては、病巣へのターゲッティング能と薬物放出制御能を併せもった製剤を構築するため、最初から相当種類の製剤原料を用いて様々な製剤の試行を行っていく予定である。上記のとおり、次年度使用額は製剤の材料費予定額そのものであるため、この材料費にそのまま充てる予定である。
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