2015 Fiscal Year Research-status Report
定量イメージング質量分析法による生体組織中の抗体医薬可視化法の開発
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15K19170
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
新間 秀一 大阪大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (30515896)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イメージング質量分析 / 抗体医薬 / 組織上消化 / 可変領域 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,新規分子イメージング手法であるイメージング質量分析(IMS)を用いて,抗体医薬イメージングのための試料前処理法の検討により,消化ペプチドを用いたIMSが実行可能であることを実証し,抗体医薬品の組織内分布情報の可視化を行う.具体的には,試料組織上で分子の位置情報を保ったままタンパク質の変成・消化を行い,得られた消化産物のIMSを行うことで目的を達成する.また,隣接切片より抽出したタンパク質を液中消化し,液体クロマトグラフタンデム質量分析計(LC-MS/MS)を用いた目的タンパク質の定量結果とIMSによる分布結果を統合することにより,定量イメージング結果を提供する.この実現による応用範囲は,薬物評価手法に留まらず,生化学や分子生物学においても大きなインパクトとなると期待される. 本研究ではこれまでトラスツズマブをマウス肝臓切片や脳切片上に滴下し、組織上消化を試みトラスツズマブの可変領域由来のペプチドが検出可能かを検討した。消化酵素の濃度やタンパク質変性剤の検討などを行っているところではあるが、予想以上に検出感度が低く現在までのところ大きな進展が見えていない状況である。一方、組織切片に滴下したトラスツズマブを抽出し液中消化を行いLC-MS/MSにて定量する系にも着手しているところであるが、イオン化サプレッションの影響を避けるための方策を現在検討中である。以上より、これまでの検討では未だ大きな成果が得られていないが、その一方で組織上誘導体化、マトリックスへの添加剤およびMS/MSによるイメージングを組み合わせることで非常に高感度で特異性の高い測定が行えることもわかってきた。28年度はこれらの方法を組み合わせ、動物組織からトラスツズマブ由来のシグナルを得たいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は所属変更があり実験室整備等も行っていたため、4月から8月にかけて研究の進捗が大きく遅れた。また、所属変更により本研究で対象とする医薬品の入手も困難であることがわかった。本年度は実験室整備の間に、医薬品の手配を行なうことができた。また、研究に関しては当初想定していた方法のみでは検出感度の不足がわかったため、近年得られた試料前処理による高感度化の知見を適用していきたいと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の進め方であるが、組織上タンパク質消化の消化効率改善と検出の高感度化が重要となる。装置は当初より質量顕微鏡を用いて行うことになっていたが、試料前処理を工夫した後にも感度が不足する場合、他施設に設置されているフーリエ変換型質量分析計を試みる(現在のところ、浜松医科大学もしくは北海道大学に設置されているイメージング装置を想定している)。フーリエ変換型質量分析計は、極めて高い質量分解能を有し、質量の検出上限も質量顕微鏡と比較して高いため、有用である可能性がある。 当初、臨床検体も取り扱う予定であったが本年度の進捗から動物組織を用いて手法を確立するまでに止めたいと考えている。
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Research Products
(1 results)