2015 Fiscal Year Research-status Report
患者iPS細胞の遺伝子変異修復と導入による若年性骨髄単球性白血病発症機構の解析
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15K19177
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
松田 和之 信州大学, 医学部附属病院, 主任臨床検査技師 (00647084)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 若年性骨髄単球性白血病 / iPS細胞 / ジンクフィンガーヌクレアーゼ / ヌクレオフェクション / 遺伝子改変 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、本来の遺伝子座位でのゲノム改変が可能であるジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を利用して、若年性骨髄単球性白血病(JMML) 関連遺伝子変異を修復・挿入し、単一遺伝子変異による細胞増殖能の違いを解析し、JMML の発症機構を明らかにすることである。 H27年度の研究成果として、CompoZrカスタムZFNを用いてPTPN11遺伝子変異部位特異的ZFNプラスミドを作製した。ZFN によるゲノム改変に必要なドナープラスミド(ZFN による切断部位の上流・下流に各800bp の領域をホモロジーアームとして有するプラスミド)を作製した。非特異的なゲノム改変を抑制する目的で、ホモロジーアーム内に、塩基置換を行った。プラスミド導入の確認(蛍光あるいは薬剤スクリーニング)を行うために、ドナープラスミド内にeGFP配列あるいはピューロマイシン耐性遺伝子配列の挿入を行った。そして、浮遊系細胞株(U937)および接着系細胞株(A549)を用いて、ZFNプラスミドおよびドナープラスミドの細胞導入およびゲノム改変について検討した結果、ヌクレオフェクション法によりeGFPの発現(蛍光)が確認され、また、ピューロマイシンの添加により2週間後にコロニーが確認されたことから、細胞導入が可能であることが分かった。さらに、これらの導入細胞では、ゲノムDNA上の適切な遺伝子座位に変異挿入が確認できZFNプラスミドが作用していることを確認できた。 H27年度の研究成果であるPTPN11遺伝子変異部位特異的ZFNプラスミドおよびドナープラスミドの作製、および両プラスミドを用いた特異的遺伝子改変の成功はJMML特異的遺伝子変異の修復・挿入が出来るという点で、意義は大きいと考える。今後、iPS細胞での遺伝子改変が可能となれば、単一遺伝子変異による細胞増殖能の違いを明らかにする上で重要であると考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
JMML由来iPS細胞を用いて遺伝子改変を行い、単一遺伝子変異による細胞増殖能の違いを解析するという最終目的に向けて、PTPN11遺伝子変異部位特異的ZFNプラスミドおよびドナープラスミドの作製ができ、浮遊系・接着系の細胞株を用いた検討から、細胞導入と遺伝子改変を確認できた。集塊状のiPS細胞の発育を阻害しないようなシングルセル化の方法やプラスミドの導入条件などの検討を行っている段階にあるため、おおむね順調に進んでいると判断している。次項の研究推進方策に従い、検討を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、iPS細胞への両プラスミドの導入を行うため、通常、MEF上で集塊を作って増殖するiPS細胞をシングルセル化させる方法を検討する。具体的には、iPS細胞集塊をaccutase、EDTAトリプシンの2種類の剥離処理法を検討する。さらに、ROCK阻害剤の添加など、シングルセル化したiPS細胞が効率よく増殖・コロニー形成する最適なシングルセル化の方法を確立する。その後、ヌクレオフェクションの条件を検討し、安定したiPS細胞へのプラスミド導入条件を確立する。導入の確認は、eGFPドナープラスミドとピューロマイシン耐性ドナープラスミドを適宜使い分けて使用する予定である。遺伝子改変前後のiPS 細胞からCD34 陽性細胞を分化誘導し、細胞増殖能の違いをしたいと考えている。
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Causes of Carryover |
今年度の研究費の主な使用用途としては、プラスミド作製や各種の細胞株の培養およびiPS細胞の維持培養に必要な試薬等の購入であった。当初の計画では、iPS 細胞へのZFN 発現プラスミドおよびドナープラスミド細胞導入と遺伝子改変までを実験計画としていたが、eGFPドナープラスミドとピューロマイシン耐性ドナープラスミドなどのプラスミドの作製や浮遊・接着細胞を用いたプラスミド導入検討とZFNプラスミドによる遺伝子改変の有無や特異性の確認をする検討に研究費を使用し、また時間を要した。そのため、iPS細胞への導入検討の途中となっており、当初の計画に計上した額との差額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
患者由来iPS細胞を用いて、安定してプラスミドを導入できる培養条件・導入条件の確立を行い、遺伝子改変前後のiPS 細胞からCD34 陽性細胞を分化誘導し、メチルセルロース法によるコロニー形成能やRAS-MAPK シグナル経路分子のリン酸化(活性化)を解析することで単一遺伝子変異よる細胞増殖能の違いについて明らかにする予定である。次年度使用額はこの解析に使用する導入試薬、維持培養・分化誘導培養に使用する培養関連試薬及びタンパク・遺伝子解析試薬の購入費としてH28年度請求した研究費と合わせて使用する予定である。
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