2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K19180
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
長谷川 菜摘 神戸大学, 保健学研究科, 助教 (20708599)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | 転写メディエーター / MED1 / 乳癌 |
Outline of Annual Research Achievements |
私は、基本的転写共役複合体メディエーターのサブユニットMED1とMED24が協調して、エストロゲン受容体を介する正常マウス乳腺の思春期発育やヒト乳癌細胞の増殖を担うことを報告した。本研究はこの成果を基に、MED1が核内受容体等様々なDNA結合転写因子やPGC1等アダプター分子に共役することに注目して、転写の視点から乳癌の発症機序や特性を解明する。さらに乳癌の発症・増殖・転移・予後・治療反応性等を遺伝子の変化で予測可能にし、それらの検査方法を考案するための基礎データを得ることを目的とする。 平成27年度は、我々の持つMED1変異マウス[MED1 singke KO, MED1(1-530) KI, MED1(LX) KI]をFVB/Nにバッククロスし、乳癌モデルマウスと交配することによりMED1変異乳癌モデルマウス作製が完了した。予備実験により、乳癌モデルマウスの発症には24週齢以上の長期の観察が必要であることから、検証に十分な個体数を揃えられるよう、計画的に交配・観察し、MED1が野生型の乳癌マウスと比較して、週齢別乳癌発症率、触診による乳癌の増殖速度の定量、転移の有無、生存曲線を検討した。まだ観察中の個体もあるが、現段階で少なくともMED1(1-530) KIマウスは発症率・発症後の乳癌の増殖速度において、野生型と比較し有意に低下を認めた。一方でMED1 singke KOマウスは野生型と比較してもこれらの項目で有意な低下は認めなかった。従って乳癌の発症にはMED1C末端が重要な役割を担っていることが強く示唆される。 また、科研費「研究活動スタート支援」により作成したERαとMED1(1-530)をバイパスするCCAR1のKOマウスについて、乳癌モデルマウスと交配するためFVB/Nに現段階で少なくとも3回のバッククロスを行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に示したことのうち、MED1変異乳癌モデルマウス作製とその解析、CCAR1 KOマウスの遺伝背景の統一が順調に進んでおり、次年度の研究につなげることが十分可能である。
|
Strategy for Future Research Activity |
当初の計画に従い、現在検討中のMED1変異乳癌モデルマウスに加え、エストロゲン機能に関わるMED1アダプターの欠損マウス、および乳癌ニッチ機能を上げると考えられる間葉系幹細胞異常増殖マウスと乳癌モデルマウスを交配して、乳腺細胞のMED1と乳腺周囲の環境が乳癌の発癌と特性にどう関与するかを個体および分子のレベルで解明する。 また、種々のヒト乳癌細胞株でMED1ノックアウト乳癌細胞を作成し、その増殖能の評価やヌードマウスへの移植を行い、腫瘍増殖速度の定量、転移、生存曲線、TamoxifenやFulvestrant、Trastuzumabに対する感受性について比較検討し、MED1と乳癌発症・増殖・転移・予後・治療反応性との関連について評価する。
|
Causes of Carryover |
平成27年度に参加した学会の会場が極めて近隣での開催であったため、旅費が想定よりも節約できたために予算の残余があった。以前なら細かい物品を発注して消化するところであったが、本研究費が基金化されたことから、次年度に繰り越して真に有効な利用を図ることにした。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
消耗品(試薬)に充てる予定である。その他は計画通りの研究費の使用計画を持っている。
|