2015 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
15K19215
|
Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
稲庭 拓 国立研究開発法人放射線医学総合研究所, 重粒子医科学センター, チームリーダー (10446536)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 陽子線治療 / X線の硬質化 / 阻止能比 / 線量計算 / 飛程誤差 / X線CT |
Outline of Annual Research Achievements |
高エネルギー陽子線を用いたがん治療の良し悪しは、体内での陽子線の停止位置(飛程)を精度よく制御できるかに強く依存する。本件は、陽子線治療の治療計画において、患者のCT画像から患者内の陽子線に対する実効的な密度(阻止能比)分布を求める変換処理をテーラーメード化することで、この変換に起因する飛程誤差を軽減するための汎用的なアルゴリズムの開発を目的とする。 阻止能比は陽子線のエネルギー(速度)に依存するが、一般的な治療計画装置では、ある固定エネルギーを仮定して阻止能比が決定されており、飛程誤差の一つの要因となっている。そこで、体内での飛程誤差を軽減するために、阻止能比の計算で仮定する陽子線の最適なエネルギーを決定した。ICRPの人体数値ファントムを用いてエネルギー依存性を無視すること生じる阻止能比の誤差を見積もり、その誤差を最小にする陽子線のエネルギーが70 MeVであることを明らかにした。この結果は、原著論文としてまとめ英文誌Physics in Medicine and Biologyに投稿中である。 次に、任意の被写体のCT画像が作成可能なシミュレーション体系を構築した。タングステン標的・アルミフィルターからなるX線発生装置から管電圧120 kVpの連続X線を発生させ、反応断面積データをもとに被写体内のX線の減弱を計算し、ラドン変換によりプロジェクション像を作成する。これをFBPにより再構成することで被写体のCT画像が作成できる。このシミュレーション体系を用い、校正用ファントムのサイズの違いが体内の阻止能比に及ぼす誤差を見積もった。誤差は当初想定していたよりも小さいことが明らかになった。この結果については、原著論文を執筆中である。 更に、上記シミュレーション結果を踏まえ、CT値から阻止能比への変換テーブルを構築するためのCT校正用ファントムを作成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
阻止能比の計算で仮定するべき最適な陽子線エネルギーを決定し、この成果を原著論文としてまとめ英文誌に投稿した。任意の条件下で、様々な被写体のCT画像が作成可能なシミュレーション体系を構築し、CT校正用ファントムのサイズの違いが体内での阻止能比に及ぼす誤差を見積もり、CT値から阻止能比への変換処理をテーラーメード化することで、飛程誤差をどの程度へ軽減できるかを明らかにした。また、このシミュレーション結果を踏まえ、大きさの様々に異なるCT校正用ファントムを設計・制作した。 CT値から阻止能比への変換処理をテーラーメード化することで軽減される飛程誤差は当初の想定よりも小さいことが明らかになったものの、研究自体はおおむね順調に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
CT装置や撮影条件別に、作成したCT校正用ファントムの撮影を行いデータを収集するとともに、対応する変換テーブルを作成することで、ファントムサイズと変換テーブルの相関関係を導く。収集したデータや相関関係をもとに、患者のCT画像から実効的な被写体サイズを求める方法や、求めた被写体サイズから、変換テーブルを補正するアルゴリズムを開発する。また、開発したアルゴリズムの精度や様々な症例に対する有用性を検証するとともに、将来の臨床応用に向けたシステムの検討を行う。
|
Causes of Carryover |
CT校正用ファントムが当初予定よりも安価で作成できたため。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
本件で開発する、CT値-阻止能比の変換処理をテーラーメード化する手法の有用性を示すための人体模擬ファントムの作成する。また、データ収集用のノートパソコンを購入する。
|