2015 Fiscal Year Research-status Report
環境化学物質がADHD症状の多様性に及ぼす影響:事象関連脳電位を用いた検討
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15K19218
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山崎 圭子 北海道大学, 環境健康科学研究教育センター, 特任助教 (60732120)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | PCB・ダイオキシン / ERP / P300 / 認知機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
PCB・dioxinをはじめとする環境中の化学物質への胎児期暴露により子どもの発達に影響があることが指摘されている。本年度の目的は、PCB・dioxinへの胎児期曝露が注意や認知に関わる脳活動に影響するかについて検証することであった。 出生前から北海道スタディの札幌コホートに参加している母児のうち,札幌近郊に居住し中学1年生になっている68名に「脳波測定へのご協力のお願い」を送付し,同意が得られた13名の児について、視覚3刺激オッドボールパラダイム課題中の脳波の測定を実施した。母はADHD-RS質問票への記入を行った。脳波を分析した結果、15%の確率で出現する標的刺激に対して,頭頂部位で優勢となるP300が惹起した。P300の潜時および振幅と参加者の属性(母の属性として年齢,学歴,出産回数,喫煙,カフェイン,アルコール,父の属性として年齢,学歴,喫煙,年収,妊娠日数,児の属性として性別,出生体重,出生身長,出生胸囲,出生頭囲,アプガースコア,ADHD-RS)との相関は有意でなかった。一方、PCB/doxin母体血中濃度との関連を分析したところ、P300頂点潜時と有意に相関した。胎児期のPCB・dioxin母体血中濃度が高くなるほど,ターゲット刺激に対するP300頂点潜時が延長することが示された。P300頂点潜時は刺激の評価時間を反映するため、胎児期のPCB・dioxin曝露が学童期における児の注意や認知に関わる脳活動を遅延させている可能性が示唆された。今年度は測定人数が少なかったため、今後はデータを増やしてさらに検討する
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
参加者の年齢や学歴、出産回数などの属性、およびPCBs/dioxinの母体血中濃度についてはすでにデータが得られているため、本年度は脳波のデータと質問票の回答を得ることが必要であった。しかし、本年度は所属部局の倫理審査委員会の開催が大幅に遅れたうえ、提出された議題が多かったために脳波測定および質問票調査を行うための承認を得る時期が遅くなった。このことにより、本研究の開始時期が当初の予定より3ヶ月以上遅延した。特に小中学生の夏休み中の測定については実施が不可能となり、脳波については本年度に測定する予定であった50人を下回る13人分のデータを得るにとどまったが、測定時の課題の決定や本コホートにおける初の生体計測を開始することができ、今後の道筋を確立することができた。質問票のADHD-RSについては年度末までの期間がわずかであったため、本年度は郵送による調査は見送り、脳波測定のために来所した13人に記入してもらった分のみをデータとして記録した。質問票のASSQについては、追加で倫理審査を行ったため脳波の測定開始時に間に合わなかったため、次年度以降に郵送で行うこととした。
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Strategy for Future Research Activity |
脳波については札幌近郊に居住し中学1年生になっている68名のうち(平成27年12月時点)、昨年度すでに脳波測定を行った13人を除いた55人の参加者に「脳波測定へのご協力のお願い」を再送する。また、平成28年度に中学1年生になった112名、および小学校6年生になった76名には新たに送付して協力を募る。今年度は夏休みと冬休み期間に測定ができることに加えて、新たに専用の検査室が利用できるようになったため、参加者の都合によっては平日も調査が可能となった。昨年度と比較すると脳波測定ができる期間や日時は大幅に増加したといえるため、最大限のデータを得られるよう、回答がない参加者には督促をすることも検討しつつ、可能な限り参加のお願いを続ける。調査票に関しては、脳波測定済みの13人を除いた全員にADHD-RSを送付する。また、ASSQに関しては札幌コホートに登録があるすべての参加者に送付して回答を得る予定である。
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Causes of Carryover |
所属部局の倫理審査委員会の開催時期が遅延したため、当初予定していた夏から秋までの期間の脳波測定が行えず、参加者への謝金および通信費が大幅に減額した。また、調査票については、倫理審査承認後から年度末までの期間が短かったために送付作業を次年度以降に見送った。このことにより調査票の印刷費、質問票使用許諾料、通信費などが年度内に使用できなかった。また、調査の結果を発表するための学会参加費用も未使用となっている。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
脳波測定については参加者に支払う1件あたりの謝金額を当初の予定である2000円から3000円に増額し、調査票回答への謝金は支払わないこととした。最初の計画では昨年度60名の測定を行う予定であったが実際は13名のみしか測定できなかったため、謝金の残額は本年度測定する100名分の謝金300000円の一部として使用する。その他の残額は、昨年度は実施できなかった札幌コホート全員への質問票および「脳波測定へのご協力のお願い」の郵送に使用する印刷費、質問票使用許諾料、通信費として使用する計画を立てている。また、本年度は日本衛生学会と日本生理心理学会に順次出席するため、昨年度予定していた学会費用を用いる。
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Research Products
(3 results)