2015 Fiscal Year Research-status Report
精神領域における早期診断法開発のための新しい臨床性能試験デザイン
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15K19223
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Research Institution | Aichi Medical University |
Principal Investigator |
室谷 健太 愛知医科大学, 医学部, 講師 (10626443)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 臨床研究デザイン / 診断法の比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、精神医学領域における早期診断法の開発が進んでいる。統合失調症をはじめとする精神疾患はDSV-Vに基づく確定診断が与えられることになっているが、DSV-Vが規定する確定診断判定基準の中には判定までに時間がかかる要件もあり、ほぼ確定的にある精神疾患にかかっていると考えられても、その症例のデータを解析に取り扱えない、という問題があった。本研究では、その問題を解消するための統計学的方法論開発を目的とした。 初年度は確定診断のある症例とない症例の尤度を構成して、2つの診断法の比較パラメータの最尤推定量とその漸近分布を構成することを目的とした。International Biometrics Conference 2012で述べた内容を発展させ、Austin Biomstrics and Biostatistics誌に論文投稿し掲載された。この論文で明らかにしたポイントは、確定診断のない症例の尤度の構成方法と漸近分布を導出することであった。この論文とJapanese Journal of Biometrics誌に以前投稿した論文の考え方を組み合わせ、確定診断のある患者とない患者の同時尤度を構成した。ここまでの議論をEast Asis Regional Biometrics Conference 2015において発表し、国内外の研究者からの示唆を受けることが出来た。 同時尤度に基づき、2つの診断法を比較するパラメータの最尤推定量の導出と漸近分布の導出まで初年度の間に完了させたかったが、初年度中に完了に至っていない。これは初年度開始当初に異動があり、研究開始までに若干の時間を要したことが原因と考えられる。しかし、全体としては概ね順調に研究は進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は確定診断の有無が混在している状況下での2つの2値診断法の比較のための方法論開発が目的である。その前段階として、確定診断が無い状況下での診断法の比較のための方法論について述べた論文を出版した(K.Murotani et el. Follow-up design for comparing two binary diagnostic tests. Austin Biom and Biostat. 2015; 2: 1016)。本研究で開発したい方法論を展開していくための材料がそろったという意味で、最低限の進捗は認められたと考える。 加えて、国際学会(K.Murotani. A method for comparing two binary diagnostic tests with a mix of patients with definitive and non-definitive diagnoses EAR-BC 2015/12/20-22)にて、発表をし、国内外の研究者からの貴重なコメントを受けることが出来た。次年度の研究結果をまとめていくために必要な理論的基礎と次の段階に対する示唆を受けることが出来た。 当初の研究計画では初年度終了時に、1)確定診断のある患者、ない患者の尤度を構成すること、2)比較パラメータ推定量の漸近分布の導出まで行うことが目的であった。現在までの進捗状況は1)は完了したものの2)は現在進行中であるため、計画段階から若干遅れていたため、総合としては「やや遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、開発した方法論の国際計量生物学会発表と論文発表を中心的に行う。そのためには、現場の臨床医の協力がより重要となるため、研究協力者との連携を開始する。具体的には、初年度で構築した尤度に基づき診断法を比較するためのパラメータの最尤推定量と漸近分布を導出する。その分布に基づき症例数設計式も開発する。方法論の開発と並行して大規模に数値シミュレーションを実行し、開発した方法論の性能を数値的に確かめる。 臨床医とは、開発した方法論を実臨床で応用する際のボトルネックとなるポイントについて臨床の観点から特にディスカッションする。そのために、年数回互いの施設を訪問し、集中した時間が取れるよう打合せを計画する。仮に方法論開発で予期せぬ困難が発生した場合は、実臨床での応用に関する部分の打合せを減らし、方法論の開発が第一に進めることが出来るよう問題解決に取り組むこととする。
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Causes of Carryover |
研究結果がある程度見込みが出てきたため、次年度に国際計量生物学会(2016.7.10-15, カナダ)で発表をするための旅費に充てたかった。2016年に少額でも持ち越しておきたかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
2016.7.10-15カナダ旅費および論文投稿費に充てることとしている。
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