2016 Fiscal Year Research-status Report
農村部・都市部住民における慢性腎臓病の要因の解明と新規マーカーの確立
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15K19232
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
久保田 芳美 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (60403317)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 疫学調査 / 腎機能 / 農村部住民 / 都市部住民 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度は、農村部住民コホート「篠山研究」において、647名(男性292名、女性355名)の篠山市民より研究調査への協力を得た。推定GFRの分布は、男性:60未満17.5%、90以上6.5%、女性:同11.8%、9.6%であった。尿中アルブミン・クレアチニン比の分布は、男性:30以上299未満3.4%、300以上0.3%、女性:同2.6%、0.0%であった。腎機能にも関連すると考えられる尿中ナトリウムから推算した推定塩分摂取量の平均値は、男性9.2グラム、女性8.5グラムであった。尿中L型脂肪酸結合蛋白(L-FABP)について、2年間の調査で得られた検体の測定を行った。継続して受診した対象者の2回目の結果を除外した解析対象人数は男性447名、女性553名となった。男性において、尿中L-FABPの6分位最高値群(Q6:2.43 ug/gCr以上)において、慢性腎臓病(CKD)の多変量調整オッズ比は、6分位最低値(Q1-Q2:1.32 ug/gCre以下)群と比べて2.26(1.01-5.05)倍と有意に高かった。L-FABPの6分位最高値群の範囲は、糖尿病性腎症の経過観察に用いられる基準値(8.4 ug/gCre以下)よりも低かった。女性においては、尿中L-FABPとCKDリスクとの関連はみとめられなかった。尿中L-FABPは、健康な住民集団においても、CKDのスクリーニングに使用できる可能性が示唆された。都市部住民コホート「神戸研究」については、塩味味覚閾値高値と仮面高血圧との関連についての原著論文を作成中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
篠山研究においては順調に研究協力者募集ができたことで、L-FABP測定の検体数を拡充し、再解析を行い、論文作成を進めている。L-FABPは、糖尿病性腎症の経過観察に使われ、腎機能や動脈硬化に関連する可能性があるが、一般住民集団における知見は見当たらない。そこで、健康な住民における腎障害の早期発見・早期予防に用いられるかについて検討を行っている。篠山研究に関する筆頭著者として執筆した論文では、食習慣と動脈硬化早期指標についてまとめた短報が兵庫医科大学医学会雑誌に受理され、現在喫煙者は非喫煙者と比べて下肢動脈硬化早期指標であるABI(エービーアイ:上下肢動脈収縮期血圧比)低値のリスクが高いことを報告した原著論文がAngiologyに受理された。平成28年度は、神戸研究におけるL-FABPの測定や篠山研究における血管年齢検査を資金不足のために断念するなど、研究計画の縮小があったものの、順調に成果が出ており、総合的に見れば、概ね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
篠山研究では、重点的に腎機能を評価するために、平成29年度も尿中アルブミン、ナトリウムなどの関連指標の測定や生活習慣問診を行う。これまでの生活習慣と、推定GFRと尿中アルブミンを組み合わせたCKDの変化との関連について分析する。アウトカムとしては、動脈硬化指標としての心臓足首血管指数 (cardio-ankle vascular index:CAVI)および上下肢動脈収縮期血圧比 (ankle brachial index:ABI)の検査を再開し、65歳以上になった研究対象者について再検査を行う。アメリカ心臓病学会・アメリカ心臓協会(ACCF / AHA)診療ガイドライン2011によると、65歳以上で末梢動脈疾患リスクが高まるとされ、ABI検査が推奨されている。神戸研究でも確立した腎機能関連項目とCAVI・ABI検査を測定し、篠山研究の比較集団とする。
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Causes of Carryover |
自分が関係する各研究の予算が厳しかったため、篠山研究において、CAVI・ABI検査を休止し、神戸研究のL-FABPの測定も中止した。その結果、残高が生じた。平成29年度は、追跡調査による評価をしたいため、検査が必須であり、予算が必要である。この残高は、平成29年度に再開するCAVI・ABI検査の諸経費に充当する。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
篠山研究にて平成29年度に再開する動脈硬化指標のCAVI・ABI検査の人件費や消耗品、印刷や郵送の諸経費に用いる。平成29年度は、健康な一般住民においてL-FABPを腎機能低下の予測指標として用いることが可能かについて検討するため、動脈硬化指標(CAVI・ABI)や腎機能の追跡調査を行う。篠山研究および神戸研究の2017年度の尿中アルブミン、ナトリウムなどの関連指標の測定を行う。
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Remarks |
篠山研究の篠山市民向けの研究成果報告会についての案内を篠山市広報に掲載し、2016年6月4日に篠山市民センターにて報告会を実施した。
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Research Products
(9 results)
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[Journal Article] Impact of Flushing Response on the Relationship between Alcohol Consumption and Gamma-glutamyl Transpeptidase: the KOBE Study.2016
Author(s)
Hirata T, Higashiyama A, Kubota Y, Sugiyama D, Kuwabara K, Tatsumi Y, Hirata A, Nishida Y, Kadota A, Imano H, Nishikawa T, Miyamatsu N, Miyamoto Y, Okamura T.
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Journal Title
Jpn J Alcohol & Drug Dependence.
Volume: 51
Pages: 173-183
Peer Reviewed
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[Journal Article] Relationship between Non-High-Density Lipoprotein Cholesterol and Low-Density Lipoprotein Cholesterol in the General Population.2016
Author(s)
Kuwabara K, Harada S, Sugiyama D, Kurihara A, Kubota Y, Higashiyama A, Hirata T, Nishida Y, Kawasaki M, Takebayashi T, Okamura T.
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Journal Title
J Atheroscler Thromb.
Volume: 23
Pages: 477-490
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Underweight Young Women Without Later Weight Gain Are at High Risk for Osteopenia After Midlife: The KOBE Study.2016
Author(s)
Tatsumi Y, Higashiyama A, Kubota Y, Sugiyama D, Nishida Y, Hirata T, Kadota A, Nishimura K, Imano H, Miyamatsu N, Miyamoto Y, Okamura T.
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Journal Title
J Epidemiol.
Volume: 26
Pages: 572-578
Peer Reviewed / Open Access
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[Journal Article] Prognostic significance of endogenous erythropoietin in long-term outcome of patients with acute decompensated heart failure.2016
Author(s)
Nagai T, Nishimura K, Honma T, Higashiyama A, Sugano Y, Nakai M, Honda S, Iwakami N, Okada A, Kawakami S, Kanaya T, Asaumi Y, Aiba T, Nishida Y, Kubota Y, Sugiyama D, Okamura T, Noguchi T, Kusano K, Ogawa H, Yasuda S, Anzai T; NaDEF investigators.
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Journal Title
Eur J Heart Fail.
Volume: 18
Pages: 803-813
DOI
Peer Reviewed
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