2016 Fiscal Year Research-status Report
髄膜脳炎を惹起するB. mandrillarisの 国内棲息状況と感染経路の解明
Project/Area Number |
15K19240
|
Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
山内 可南子 弘前大学, 保健学研究科, 助手 (80740810)
|
Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
Keywords | アメーバ性髄膜脳炎 / 土壌 / 環境DNA |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究計画は髄膜脳炎を引き起こす自由生活性アメーバの国内生息状況を明らかにする試みである。H27年度に引き続き、国内の様々な気候を示す地域から土壌を採取した。これらの土壌は培養し、10日間の培養の後、寒天上に出現した大型アメーバを切り出し法により分離した。分離に至った大型アメーバは、バラムチア特異的PCRによって遺伝子検査を実施し、現在のところ3種でバラムチア遺伝子が認められている。今後、長鎖での遺伝子シークエンスにより種の同定を実施し、Genebankへの登録を実施する。 これら土壌環境下から分離したバラムチアは、いずれも青森県内土壌からの分離株である。これまで世界各国の環境下バラムチア分離報告は、米国カルフォルニアやイラン、メキシコなど温暖な気候に位置する地域で報告されており、また臨床報告も同地域に集中してきた。そのため、地域的な偏りを持つ感染症のように捉えられてきたが、本研究で北日本のような寒冷な地域においても本アメーバが生息することが明らかになり、アメーバ性髄膜脳炎に罹患するリスクは気候や地域差に影響されないと考えられる。 土壌を用いたPCRでは、約20%の土壌でバラムチア遺伝子が検出されており、世界各国で報告されるバラムチア陽性率と国内陽性率はほぼ同程度であることが分かってきた。しかしながら、当研究室で実施する土壌のDNA抽出方法は、PCR感度が低いという問題を抱えている。現在、DNA抽出効率を高め、さらに感度を改善するため、複数のプロトコルを作成し感度検証を実施している。今後効率よい分離培養、種の同定を行っていくうえで、より高純度にDNA精製する技術が求められる。H29年度は、分離培養とともに環境DNAを用いたPCR検出を継続し、日本国内のバラムチア生息状況を明らかにしていく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
バラムチアの分離には土壌の培養が必須であるが、継代培養によってバラムチアのPCR反応が認められなくなる問題が発生した。培養技術が現在もなお確立されていない本アメーバの分離培養は困難であるが、現在、単離確立を上げるため、培養方法を変更し継続実験を行っている。また土壌PCRの感度の問題もあり、より高純度の生成法を確立する必要がある。こちらも現在改善し、反応感度の改善を認めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
土壌DNAのPCR感度の改善を行い、広域の疫学調査が完了した後、成果は国内外学会にて報告する予定である。また、単離培養に至った環境分離バラムチアは、16s rRNA領域の解析を実施し、既報株との比較検証を実施する。
|
Causes of Carryover |
土壌DNAを用いたPCR感度に問題があり、土壌解析の大幅な遅れの原因になっている。また、単離したアメーバの培養にも困難であることが分かってきた。環境株は、臨床株の培養法が適さずすぐに死滅してしまった。今後は培養とPCR感度について検証を必要とする。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
これまで、土壌DNAの抽出には本研究室は開発プロトコルを用いて実施してきた。今後は、各種キットを変更しDNAを抽出する予定である。また、成果は論文投稿など国内外に発信する。したがって、次年度使用額は試薬購入費や論文校正費用などに充てる。
|