2016 Fiscal Year Research-status Report
発現ネットワーク解析とエピゲノム情報に基づくアディポネクチン発現パスウェイの解明
Project/Area Number |
15K19242
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
中杤 昌弘 名古屋大学, 医学部附属病院, 病院助教 (10559983)
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Project Period (FY) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | エピゲノム / レジスチン / アディポネクチン / バイオインフォマティクス / DNAメチル化 / SNP / 生活習慣病 / 心筋梗塞 |
Outline of Annual Research Achievements |
申請者は、遺伝子発現ネットワーク解析と、遺伝子発現・DNAメチル化・SNP情報の統合解析により、後天的ゲノム修飾が血中アディポネクチン濃度に如何なる影響を与えて最終的に疾患発症に至るのか、アディポネクチン発現パスウェイの調査・解明を目的とする。 H27年度~H28年度にかけて、申請者は5種類のデータセットを基に個々のデータセットに対してネットワーク構築を行い、複数のデータセットを通して検出できるADIPOQモジュール遺伝子の探索を行ってきた。そのような中、昨年度になり複数のデータセットで一貫して観測されたモジュールの同定方法が発表されたことから、この新しい方法を用いて一から解析を実施し直した。その結果、より高精度なネットワークの構築に成功し、18種類の遺伝子発現モジュールを同定できた。その内、11種類のモジュールがADIPOQ遺伝子発現量と有意(p < 0.05)な関連のあるアディポネクチンモジュールであった。 上記と平行して、昨年度はアディポネクチンの分泌異常がリスク因子となる疾患、心筋梗塞に着目し、心筋梗塞関連DNAメチル化の探索も実施した。結果として、ゲノムワイド有意水準(P<1.43x10の-7乗)に到達したDNAメチル化サイトの同定に成功した。また、これまでにDNAメチル化データのネットワーク解析に基づき、老化と関連するDNAメチル化のモジュールが既定されている。このモジュールのメチル化強度から、対象の老化の程度を推定することができ、この推定値と実年齢の差分値は冠動脈疾患を含む総死亡率と関連することが報告されている。我々は非致死性心筋梗塞患者192例、対照192例に対してDNAメチル化状態を測定し年齢の差分値を計算、両群で差があるか評価した。その結果、有意な差は確認されず、既報のDNAメチル化のモジュールが非致死性心筋梗塞と関連しないことを確認できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで申請者は、5種類のデータセットを基に個々のデータセットに対してネットワーク構築を行い、複数のデータセットを通して検出できるADIPOQモジュール遺伝子の探索を行っていた。しかし昨年度に、複数のデータセットで一貫して観測されたモジュールの同定方法が開発されていることを知り、この新しい方法を用いて一から解析を実施し直した。その結果より高精度な結果を得られたが、当初の予定より研究が遅延した。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度得られたADIPOQモジュールに対して、公開されている遺伝子発現データ・メチル化アレイデータを用いて、ADIPOQモジュール及びADIPOQ遺伝子の発現量と関連するDNAメチル化サイトを探索する。最終的には、我々が保有するDNAメチル化、SNP、血中アディポネクチン濃度を用いて、公開データで観測された結果を検証する。
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Causes of Carryover |
前述の通り、昨年度はより高精度な遺伝子発現ネットワークの構築に注力した結果、より効率的にデータを解析することが可能になり、より高精度な結果を得ることに成功した。その結果、当初の予定より研究が遅延したため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
より高精度かつ高速に計算マイクロアレイの解析体制が構築でき、様々な発現データの解析が可能となった。今後はスーパーコンピュータを用いて構築されたネットワークの検証作業とDNAメチル化データ、SNPを併用したマルチオミクス解析を行う。 また、今回の成果発表のための旅費・論文投稿費に充てる。
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